天秤 ページ8
ぐらつく心境でも、時間は待ってくれない。
夏休みも後半に差し掛かった9月の2週目。
今日は坂田くんと出かける日だった。
「明日のデート、楽しみやね！」
と昨晩送られてきた彼からのメッセージには、「私も楽しみだよ」とだけ返していた。
まだ付き合っていないのに「デート」といわれると、少し変な感じがして妙に意識してしまう。
集合時間は8時。
お店だって開店するのはだいたい10時だし、やっぱり8時じゃ早すぎる。
いつもならもう少し遅い時間に集まるのだろうけど、いったいどこに行くんだろう？
「あ、Aちゃん！おはよう！」
私の最寄り駅に着くと、坂田くんが改札の前に立っていた。
コーチジャケットに黒スキニーを合わせてモノトーンを基調とし、ネイビーのボーダーTシャツを合わせてカジュアルに着こなしている。
すらっとした坂田くんに、とてもよく似合っていて、だけどもモノトーンだからか、どこか大人っぽく見えた。
「坂田くん、おはよう。ごめん、待った？」
「ぜんぜん！今日、ほんまに楽しみにしとったから！じゃ、いこ！」
はい、と差し出された手に、そのまま重ねようとして、一瞬戸惑う。
「……今日１日は、俺の彼女でおって？」
坂田くんは私の伸ばしかけた手をやんわりと包むと、指をからませた。
「……うん」
私はそれだけで心臓がぎゅっと苦しくなってしまった。
きっと、坂田くんはもっと苦しいに違いない。
遠慮がちに繋がれた手から、坂田くんの想いが痛いくらいに伝わってくる。
…………坂田くんと2人で出かけるのは、これで最後になるのかもしれない。
ふと、そんなことが頭をよぎった。
このまま、お互い苦しいままで、いいのかな。
最後になるかもしれないのに。
そう思ったら、自然と体が動いた。
坂田くんの手をぎゅっと握り返すと、彼は驚いてこちらを見た。
「今日、いっぱい楽しもうね。坂田くんが連れてってくれるところ、いつも好きなところばっかりだから、楽しみ」
「……うん」
坂田くんは嬉しそうに目を細めた。
電車に乗って1時間。
都内を出て、京葉線に乗り換える。
新木場駅を通り過ぎると、見えてきたのは、夢の国だ。
そこは高校のころ、坂田くんたちと4人で行ったことがある。
不思議に思って坂田くんを見上げると、彼は窓の外に視線を投げたまま言った。
「あのとき、ふたりで行こうって約束してて、行けなかったから」
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りひと(プロフ) - みかんさん» みかん様/ コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです♪今後ともよろしくお願いいたします！ (2020年1月1日 10時) (
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みかん - 完結おめでとうございます！りひとさんの作品大好きです。これからも応援しています、頑張ってください！ (2020年1月1日 9時) (レス) id: 6edfb9ce46 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - しぃさん» しぃ様/コメントありがとうございます！そう言っていただけて嬉しいです！今後とも応援のほどよろしくお願いいたします！またコメントお待ちしておりますね♪ (2019年12月31日 20時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
りひと(プロフ) - まつりさん» まつり様/ありがとうございます！新年には新しい作品も投稿してまいりますので、今後ともよろしくお願いします♪またコメントお待ちしておりますね！ (2019年12月31日 20時) (レス) id: d056bbadb9 (このIDを非表示/違反報告)
しぃ(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても好きな作品なので2人分のルートを作ってくださり、とても嬉しかったです！他の作品の更新も楽しみにしています (2019年12月31日 19時) (レス) id: 42c92e6201 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：りひと
| 作成日時：2019年12月24日 11時
