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「……い"…っ」
「だ、大丈夫…?」
数分すると頭を抑えてうずくまってしまう坂田。頭が割れるみたいに痛いようで、声をかけても聞こえているのか、意識はあるのか否か。
「…A、おねが、背中の下の方が痛い、さすって、」
「…この辺?」
一体なんだろうか。涙目で言う彼の言うことをほっとけるはずもないので、少し不安な心臓を落ち着かせ、震える彼の腰のあたりを触れた。何かが、当たった。円柱形の、柔らかいものが。彼のTシャツの中から。
「…なに、これ」
「っ…ふさふさするねんけど…」
彼が鼻を啜りながらTシャツを捲りあげる。腹チラとか一瞬思ってしまうものの、『ドキドキ』の欠片もなく私は背中側を見つめた。男っぽい肉の引き締まり具合とくびれに一瞬何かがぐっとくるが、それよりもおかしいものが腰の下からひとつ。
赤い毛を纏った、円柱形。
20センチ程で生き物のようにくねりくねりと動いている。そして、坂田の抑えていた頭からはひょこっとネコ科らしきものの耳が生えている。
「…ねこ、みたい」
【触れないと出られない部屋】
【耳と尻尾をしっかり触ってください】
非現実的話だ。…いや、こんな部屋に入っている時点で非現実的だけど。
「…え"?…これ絶対俺やなくてAが飲むべきやったらお題やん」
「……抜けない?」
「いや、抜けへんわ!!!…い"って、痛い痛い!」
彼は尻の上の辺り…腰の下のあたりを抑えてまたうずくまってしまう。生えてくる時に痛みが走るみたいだった。歯茎から新しい歯が生える時のようだ。
しばらくするとすっかり馴染んでしまったみたいで、ちょこんと座ったまま尻尾を動かす練習を始めてしまう始末だった。むず痒い顔をしてくねくねと尻尾を動かしている。
「…そろそろ触っていい?」
「…みぎ…ほんでひだりー…」
「聞いてない」
彼が右と言うとぎこちなく尻尾はペチンと右に行き、床に叩きつけられる。ゆらゆらと揺れるその尻尾はまるでメトロノームのようだ。
無視されてこのままこの部屋にいるのも面倒なのでその揺れる尻尾を後ろから鷲掴みしてやる。その瞬間部屋にわんと響かんばかりの悲鳴が聞こえた。その声に驚き、手放す
「っや、やめろや!!擽ったいねん!!!」
「……でも触んないと出れない」
「…う"…、ほんなら、せめて耳からにしてや」
『絶対立場逆やもん…』なんて拗ねながら、赤毛の耳を私の前に出し、上目遣いで見つめてきた。
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しらす - は?猫耳さかたんとか天使かよ (2019年4月23日 13時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆのすけ(プロフ) - Blackgirlさん» コメントありがとうございます。続編もご期待に添えるよう頑張らせていただきます (2019年2月24日 15時) (レス) id: d6c32b13a2 (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆのすけ(プロフ) - 歩さん» コメントありがとうございます。続編もよろしくお願いします…! (2019年2月24日 15時) (レス) id: d6c32b13a2 (このIDを非表示/違反報告)
Blackgirl(プロフ) - みんな一途で可愛い。続編期待してるで。 (2019年2月22日 23時) (レス) id: 61c7222caa (このIDを非表示/違反報告)
歩 - ついに続編ですか!!おめでとうございます!黒幕も出てきた(?)事だし、これからの展開が更に楽しみです!続編もふぁいとですっ! (2019年2月22日 20時) (レス) id: 13020661c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょうゆのすけ | 作成日時:2019年1月21日 16時