薬を飲まないと出れない部屋 ページ27
見慣れた扉を開けて、塵一つない真っ白な空間に足を踏み入れた。そろそろここから逃げ出すことを考えていた。壁を叩くとそれなりに頑丈だった。殴っても、女の力では到底ビクともしないだろう。その上多分防音。窓は無い。天井は3m程。
そして部屋と部屋の間の通路からは逃げれるだろうか？あの通路の途中に扉があって中はトイレだったことを確認した。通路の長さ5mほどで、天井は低く少し薄暗い。
あぁ、完璧な部屋だ。逃げ道がない。ネズミも逃げられない。
｢…坂田、起きて｣
｢むぅ…んー…｣
諦めて坂田を起こすと彼はぱっちり大きな目を擦りながら起き上がった。部屋の真ん中には小瓶が置いてあった。逃げることを考え過ぎて気付かなかったみたい。
｢…なんやこれ｣
｢死にたくない｣
｢いやー、死なへんやろこれは！！｣
【飲むとお題が出されます】
【薬を飲んでください】
……人体実験にでも使われてるの？？？
｢じゃあ坂田飲んで｣
｢え"、それは怖いわ…｣
｢死にたくないから｣
｢それで俺に飲ませんのおかしない？？？？｣
私は瓶を開けるとふわっと甘ったるい香りがした。おもわず口元を手で覆い、坂田に突き出した。坂田もその匂いに驚き、小瓶から1歩下がった。
｢そんな甘い匂い無理やってば！女の子なら食えるやろそんな甘いん！｣
｢…｣
｢分かった、分かったから…｣
坂田はうげぇっと言って恐る恐る小瓶を手に取った。そして、目を瞑って桃色の甘ったるい液体を口の中に含んだ。安心して飲み込む様子を見つめていると突然私の肩を掴んできた。
｢っひ！？…っちょ、｣
そのまま口移しでもするつもりなのか。必死で口を閉じていたが最後には口を開けてしまう。甘い液体が口の中をかき混ぜていく。坂田は終わったように口を離そうとした。
だけど薬嫌いな私は坂田とキスするよりも屈辱だった。坂田の後頭部に手を回し、舌を上手いこと動かして液体を押し返してやった。ただの舌を絡める深いキスに見えるが、2人にとっては生死の戦いであった。
｢っ…っふ、ん｣
｢んぐっ？！…ん、ぅ｣
私が舌をねじ込んでいく。私からこんな風にキスをリードするなんて坂田も考えていなかったのか、ピクっと肩を揺らしてコクンと喉を鳴らす音が聞こえた。最後には坂田が折れて飲み込んだみたいだ。
｢…っあまい…｣
｢変わった事、何も無い？｣
｢なんも、別にぃ…｣
じゃあ、何の薬だったのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1056人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「歌い手」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
しらす - は？猫耳さかたんとか天使かよ (2019年4月23日 13時) (
レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆのすけ(プロフ) - Blackgirlさん» コメントありがとうございます。続編もご期待に添えるよう頑張らせていただきます (2019年2月24日 15時) (レス) id: d6c32b13a2 (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆのすけ(プロフ) - 歩さん» コメントありがとうございます。続編もよろしくお願いします…！ (2019年2月24日 15時) (レス) id: d6c32b13a2 (このIDを非表示/違反報告)
Blackgirl(プロフ) - みんな一途で可愛い。続編期待してるで。 (2019年2月22日 23時) (レス) id: 61c7222caa (このIDを非表示/違反報告)
歩 - ついに続編ですか！！おめでとうございます！黒幕も出てきた(？)事だし、これからの展開が更に楽しみです！続編もふぁいとですっ！ (2019年2月22日 20時) (レス) id: 13020661c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：しょうゆのすけ | 作成日時：2019年1月21日 16時
