41.いつもと違う朝 ページ41
SIDE.JIN
なにやら撮影の準備があるとかで、結局ステップ達は1日泊まっただけで帰っていった。ここら周辺で少し用事があって、たまたま近くに来たからこの家に寄っただけらしい。
「また来てね」
玄関先でステップ達にそう言うAに「オメーの家じゃねえ」と野次を飛ばすと見事に睨まれる。
「…あーあ、ステップ帰っちゃった」
三人を見送ったAはつまらないと大きな溜息を吐いた。名残惜しそうに玄関の扉を閉めた彼女に背を向け呟く。
「どうせまたすぐ来る」
「早く来て欲しいなぁ。もうステップとご飯行く約束したんだよ」
「あっそ」
あくびしながらそう返し、俺はリビングに戻る。ソファーに座ってテレビを付ければ画面いっぱいに貼り付けたような笑顔のアナウンサー。どのチャンネルも同じような朝の情報番組をやっていて、違いが分からず適当なのを選ぶ。快活なアナウンサーの声に混ざり、キッチンの方でAが冷蔵庫を開ける音が聞こえた。
「朝ご飯作ろうか?」
「え?」
俺は咄嗟に彼女を振り返った。冷蔵庫の扉を開けたままこちらを見てるA。
「冷蔵庫の中にあるものだから、そんな凄いものは作れないけど。まぁ朝だし軽くてもいいよね」
それでも良い?と今一度尋ねてきた彼女に曖昧に頷く。
「……ああ、うん」
「何にしようかなぁ」
冷蔵庫の中から適当な食材を選び、鼻歌交じりに料理を始めた彼女に俺は驚いている。確かに"飯作る役してね"とは言った。でも前日までの彼女の態度を見る限りではご飯係をする気配など更々無かったのに、まさか本当に実行してくれるとは。ステップのお陰なのか、不思議なぐらい機嫌良くフライパンを振る彼女の後ろ姿に目をやった。手際良くちゃきちゃきと動くところを見ていると、男と住んでいただけあってやはり慣れている感じもする。
「ジン君、出来たよ」
そう言って突然彼女がこちらを振り返るものだから、ばちっと思い切り目が合い、俺は咄嗟に視線を逸らした。名前を呼ばれ、立ち上がって席へ座るとAは俺の前に皿を並べる。サラダと味噌汁と卵焼きに白ご飯。
「ご飯は無かったからレンチンのやつなんだけどね」
「へー、お前すごいな」
サラリとそんな言葉が出た。キザな奴みたくなったけど、こればかりは正真正銘の本音だ。彼女は少しばかり驚いた表情をしたあと頭を左右に振る。
「簡単に作れるものばっかりだよ」
「いや、普通にスゲーよ」
俺に箸を手渡してきた彼女は照れ臭そうにありがとうと笑う。Aの珍しい表情を眺めながら、俺はいただきますと手を合わせた。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時