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兄も居ないし、家での居心地も悪いので、部屋で手紙を書いていた。
返事が来ないのは知っているが、もうヤケである。
手紙を出しに行った帰り、久しぶりに不死川さんに会った。
仕事中だったので、軽く挨拶をしただけだったが、元気そうだった。
家に帰って、自室で部屋に入って本を読んで時間を潰した。
夕食の時間になったのか、お手伝いさんが呼びに来たので、私はリビングへ行った。
リビングには私一人しか居なかった。
新手の嫌がらせかな？
母は体調が優れないらしいが、兄は何処だ？
父は仕事で遅いのだろう。仕方ない。
しかし、兄は何処だ？(二回目)
「兄さんは……？」
「まだ帰って来てません」
お手伝いさんは苦笑して答えた。
ふーん……
今日はボッチメシか。
虚しい。
いつも以上に静かなリビングで、夕食を食べる。
泣きそうなのに、涙は一滴も出て来ない。
視界が涙で歪むこともない。
無表情でいたら、また母に怒られてしまうので、笑顔を貼り付ける。
お手伝いさんは、私を視界にすら入れてなかった。
ご飯を食べ終えると、父が帰って来た。
「おかえりなさい」
「ただいま、A。母さんは今日も体調が優れないのか？」
「はい。兄さんは、まだ帰って来てません」
「……そうか」
父は羽織をお手伝いさんに渡し、自室へ戻った。
仕事で疲れているのだろう。
私も自室へ戻る事にした。
「A」
部屋のドアを開けようとしたら、母の声が聞こえた。
声の下方へ顔を向けると、ストールを肩にかけた母が、壁に手をつきながら歩いていた。
私はすぐに口角をあげて、目尻を下げた。
「……母さん……」
「今はね、だいぶマシになってるの……心配してくれてありがとう」
「良かったです」
母は私の前に来ると、私の両手を握った。
「Aはとても良い子よ。義母さんが来た時に、助けられなくてごめんなさい」
いや、貴女は悪くない。
悪いのは誰だろうか？それも解らない。
兎に角、母が負い目を感じる必要性は無いのだ。
妊婦が、下手にストレスを感じてはいけない。
繊細なのだから。
お手伝いさんが母を呼びに来たので、私は自室に入り、母はお手伝いさんに寝室へと連れていかれた。
机に向かい本を読んでいると、ふと、婚約者から貰ったかんざしが視界に入った。
本に栞を挟み、簪に触れる。
使った方が良いのかな？
可愛いけれど、使おうという気にはなれない。
まっ、アイツの事好きじゃないし！
使わなくても良いや！
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作者名：そうや | 作成日時：2020年6月7日 21時
