ー25ー ページ26
女の人は「光里」という名前らしい。
光里さんは旅をしているらしい。
世の中物騒だから、帯刀しているのだろう。
沙代は正座している私の膝の上に座って、勾玉野郎が私の服の袖を掴んで私の右側に座っている。
そんな私達を見て、光里さんは驚いた様に目を見開いた。
「三人は、仲が良いのね」
「お姉ちゃんはね、一番初めに行明さんが預かった子供なんだよ。お姉ちゃんはね、優しいんだよ」
「Aちゃん、明日には新しい家族の所に行っちゃうの」
「そうなの……」
子供達の言葉を聞き、光里さんは少し寂しそうに笑った。
「短い間だけど、仲良くしましょうね」
「アッ、ハイ」
私は反射で返事をする。
前世は社畜だったので、すぐに返事をしなきゃいけないという考えが脳に刷り込まれている。
「Aさんはね、とてもかっこいいの」
沙代が自慢気に光里さんに言う。
皆して私を褒めまくるので、嬉しいを通り越して恥ずかしい。
私は「やる事があるので」と言い、沙代を膝の上から下ろして、この場から逃げる。
何あれ?!
はっず!!
「顔真っ赤だぞ」
尚、勾玉野郎は当たり前の様に私についてきた。
ウルセェ!!
そんなの知っとるわ!!
やる事なんて無いので、寝床に向かう。
本を読もう。
皆、光里さんと遊びたいらしいし。
少し寂しいけど!
そうだよね!
新しい人とかおもちゃが来たら、皆そっちに行くよね!!
部屋の端っこで本を読む。
勾玉野郎は私の肩にもたれかかり、本を覗き込んだ。
あっ……何か、懐かしく感じる。
暫く本を読んでいたが、そろそろお昼なのでご飯を作る事にした。
勾玉野郎と台所へ行くと、光里さんがご飯を作っていた。
「あら、お腹すいたの?今作ってるから、もうちょっと待っててね」
「え、あの……」
何で人ん家の台所使ってるの?
この人、仮にもお客さんでしょ??
「Aちゃんは明日には此処を発つんでしょう?ゆっくりしてて」
「アッ、ハイ」
私は反射で頷いた。
勾玉野郎は私の手を引いて、寝床に戻る。
「麻呂眉勾玉女」
「なげぇよ」
「A」
「何」
名前を呼ばれるとは思わなかった。
周りにお寺の子供達や先生が居ない時は、必ず渾名で呼んでるのに。
珍しい事もあるなぁ。
「反射で頷くのはやめろ」
指摘されなくても解ってる。
この癖、治さないとなぁ……
意思表示は大事だけど、何もコンマ数秒で返事しなくてもいい。
沙代が、「ご飯だよ」と私達を呼びに来た。
11人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:そうや | 作成日時:2020年6月7日 21時