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耳の奥から耳鳴りがする。
その音よりも、聴こえる不規則な呼吸の音。
その瞬間じわりと手のひらに感じた何かの液体。
『…はっ、はぁ…、
っ…、あんた、破水して、ないか』
しゃがみ込んでいた女性を横にさせると、近所の人たちは救急車、警察などに連絡してくれた。
妊婦の人は近所の人に任せ、自分は楽な姿勢を取り、抜けないようナイフを支えた。
『…自分は、後回しで、っ…
彼女を、…先に、』
「2台呼んだから！
どっちかと言うとお前の方が危険な状態なんだから！」
『…っ、はー…、』
「くたばんな！気張れ！」
叩かれた両頬がヒリヒリして、痛い。
ドクドクと、血液の流れる音が聞こえる。
その音がいつも自分を安心させてくれた。
だから、眠くなってしまう。
遠くから、声が聞こえた。
何かが近づいてくる音も。
叩かれても、大声で怒られても、もう今じゃ気にならない。
こんな死に方は嫌だ。
そう思う反面、
もういいかも。と思った
ーーー
「自然を探している？
なぜそんな子供みたいなことを」
『自分、頭撃たれて使い物にならなくて除隊しました。
自分らしく死ぬには、自然なものたちに殺されたいと』
「なっ、！何馬鹿なことを言っているんだ！
死ぬなんて、そうやって気軽に！」
『…ーーーーさん、自分は、
本当は、生きていてはいけないんです。
あの日、死ななきゃいけなかったんです』
この死神がッ！！
そう言って頭を撃ち抜かれた。
その男の表情は、忘れられない。
化け物を見るようなあの眼差し。
あれは、忘れたくても、忘れられない、
「…アクウ」
名前を呼ばれ、顔を上げた。
その少女の顔は、あの時と同じ。
あの男と同じ表情をしていた。
何も、考えず
俺は、その子の首を締め上げた。
もがき、小さな手で俺の大きな手を離そうと引っ掻き、抵抗したその姿は、生きようともがいている、この世の中で一番綺麗なものだった。
少女は死んだ。
「アクウ？大丈夫か？」
そう、“俺”の頭の中で。
『……、大丈夫です。
ーーーーさん、自分のこと、捨てないでくださいね』
「大丈夫だ！私は何があっても仲間を裏切らないからな！」
そう言って、前を歩き出した少女の後ろをついていくように歩き出した。
『ーーーーさん。』
「ん？なんだ」
『自分が守りますから』
「…じゃあ、私が大きくなるまで、そばにいろ。
それまで、勝手に死ぬな」
『…はい。約束します』
「むふふっ、これでアクウは死なないな！」
ーーー
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作者名：愛 | 作成日時：2022年10月19日 23時
