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「あなたはわかるっての?」

『いいえ。少し知識があるだけです。
でも、こんな夜中に買い出しなんてさせませんよ』

「…そう、」

『旦那さんは、お仕事が忙しいとか?』

「いいえ。部下にやらせて自分はさっさと帰ってるみたい。
そんな自己中なのありえないよね。」

『…はい、』

「あなたの仕事は?どうなの?」

『まあ、事務作業を…』

「本当?」

『本当です。
事務作業と発注を…詳しいことは言えませんが、』

「…こうやってあなたが声をかけて手伝ってくれてるの、本当に感謝してるの。でも…
最近この辺りで多いみたいなのよ、通り魔が。」

『え…』

それを知っててこの人は夜で歩いてたのか?
いや、でも買い物をしなきゃ食材がなかったと言っていた。
タクシー代を節約するために命を張るのか…。

「知らないの?テレビで大々的にやってるのに?」

『すみません…テレビ、見なくて』

「現代っ子ね…、だから、あなたが私を狙ってるんじゃって疑ってしまってるの」

『じ、自分!刃物など凶器一切持ってませんから!
それに!新しい命を授かってる方を殺すなんて…』

「…冗談よ、ごめんなさい」

そう思われていたなんて…と、俯き歩いていると、ふと後ろからバイクの音が聞こえてきた。

自分が車道側に立っているから問題ないと思っていたが、そのバイクは急に停車した。

家が近くなんだな。そう思っていると後ろから坂を歩いてくる音が聞こえた。

振り向けば、そこには刃物を持ったフルフェイスのヘルメットを被ったガタイのいい男が徐々に速度を上げ走ってきていた。

街灯で、少し目元だけはみえたがあとは何も見えず、立ち向かうように妊婦を背にし守った。

腹にナイフが刺さったこと以外は何もかも自分の行動は正解だと思った。

『ぐっ、ぎっ…つ、!』

脳を回すために必要な栄養が足りないせいか、いつも以上に頭が回らない、今日は昼に何を食べたっけな、
こんなことになるなら、毎日贅沢してあんなボロアパートで暮らさない贅沢な暮らしでもすればよかった。

そう頭の中で思っていると、後ろの妊婦は耳を塞ぎ女性らしい高い声で悲鳴を上げた。

男はナイフを抜こうとしたが、抜いたら血が垂れ流れて死に近づくと聞いたことがあった。
ぐっ、と力を込めながら体を捻り腹あたりを蹴り飛ばした。

ガタイが良く、そこまで飛ばなかったが距離は取れた。
悲鳴を聞きつけた近所の人が扉を開け外に出てきてくれたおかげで通り魔は乗ってきたバイクに乗り逃走した。

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作者名: | 作成日時:2022年10月19日 23時

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