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『ーーーーさん!ーーーーさん、どこ!』
足がもつれ、雪が積もった地面に顔面から倒れた。
数秒、動かなくなり
脳みそに信号を送り、ゆっくりと地面から立ち上がった。
『…駄目だ、自分が一番わかってるんでしょ!
日が沈むって!日が沈んだら、沈んだら!!』
銃を掴み、上空目がけ一発放った。
空気が澄んでいるこの森に銃声の音が響き渡った。
『…やるしかない、全員、狩ってやる。』
銃声の音を聞きつけた、通常のヒグマよりも体が大きいヒグマが突進してきた。
『ーーーーさんの危険を削ぎ落とす。』
銃を構え、急所を一発、二発と体に撃ち込んだ。
それでもヒグマは動く、
後10歩。
咆哮を上げながら両手を使い突進してくるその体の下をナイフを突き立てながらくぐり抜けた。
ヒグマはそのまま目の前の木にぶつかり、頭を強く打ちそのまま死んだ。
腹は裂け、雪が赤く染まった。
後、2匹と子供1匹。
座るな、止まるな。
脳みそを使え。
動けるうちに動いてーーーーさんを守れ。
その時だった、違う場所から銃声が聞こえた。
嫌な予感がした。
すぐにその場所に向かって行った。
その場所にいたのは、ーーーーさんと、
あの日、戦争の時に手を握ってくれていた、ーーーーだった。
『ーーーーさん!!!』
出したこともない声をあげると、ーーーーは肩をビクッと震わせた。
ーーーーの前には死んでいるヒグマがいた。
「…、……惡空!」
そう、その時に門倉さんがきて…
「…ろ、…起きろ!!」
目を開けると、そこには焦った表情を浮かべ、自分の両肩を掴んでいる門倉さんがいた。
『…は、』
門倉「大丈夫、か?」
覚えてる、途中まで…
誰かを追いかけて、熊を殺したことまでは、
今までこんなことなかったのに、
『大きい、熊がいた。
自分は、拳銃を持ってて、熊を殺した。
体が思うように動かなくて、不便だった。』
見た通り、思った通り伝えると門倉の表情は暗くなった。
門倉「…おじさんもよく見る夢だ。
悪夢だ」
『悪、夢』
門倉「ああ、夢だ。」
『…そ、うですか。
ゆめ、夢か…』
袖で額に浮かんでいた汗を拭きとると、反対側の後部座席の扉が開いた。
頭を動かし、上を向くとバンダナを頭に巻き付けている男性が現れた。
「カドクラ。ついたら言えと何度言えば…」
門倉は、あー、悪い悪い。そう言って首の後ろを掻いた。
男性は下を向き自分の姿を確認すると眉間に皺を寄せた。
きっと前の自分はこの人に嫌なことをしたのだろう。
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作者名:愛 | 作成日時:2022年10月19日 23時