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『…白米、スープ、きんぴら…、ハンバーグ…』
どれも、一度に食べたことはない料理だった。
自分の中では、少ない給料でどうやって毎日食い繋いでいこうと、思っていたから。
『…いただきます。』
確かに、味が薄いけど、おいしい。
体に良い味付けだとおもった。
茶碗を持った時に見えた左腕の傷痕は、一生消えるものではない。
まだ瘡蓋になり、治りきっていないのもある。
自ｼｮｳ行為の傷は血液の近くを切るせいか、瘡蓋になるのが遅い。
いつもなら数十分後には血が固まっているのにも関わらず、手首の傷痕は１日２日経たないと塞がらないし、瘡蓋にもならない。
箸を置き、さっ。と袖を直した。
美味しい。
美味しい、特にきんぴら美味しい。
『…惣菜が、美味しい…』
いつもは味が濃いスーパーの値引きを貼られまくっている惣菜を買ってそれを食べて夜を明かしていた。
やはり、スーパーの惣菜は味付けが濃かったんだ。
そう思いながら食べていた。
ふと気がつくとトレーの上に乗っていたハンバーグや白米、きんぴら、スープなど、全て食べ終わってしまっていた。
『…ご馳走様でした。』
空になった食器に両手を合わせた。
テレビを見ると、あの歌の番組は終わり、何やら今どき流行りの若者が出演している今の学生の悩みを解決する番組が始まった。
とてもじゃないが、自分は見てられなかった。
つまらない。の言葉に尽きる。
チャンネルを回すと、次は天気予報のコーナーに変わっていた。
あのニュースはなかったみたいに、笑顔に振る舞っているお天気お姉さん。
どうせ天気予報が終わったらまた自分のことを取り上げるニュースを流すんだ。
嫌になり、テレビの電源を消した。
毛布を頭までかぶり、目を瞑った。
しんっ、とした部屋で、自分の心臓の音だけが聞こえた。
生きてる。
夢ではない。それだけわかれば十分だ。
鼓動が止まることはない。
息が止まることもない。
まだ自分は死ねない。
自分が求める死を見つけ出すまでは、
まだ生きていなければいけない。
自分で命を絶とうとする行為をしても、
死まで到達するほどのことはしていない。
自分の首を絞めても、心臓の音が聞こえなくなるぐらいまで締め上げて、一気に解放する。
その瞬間に聞こえる心臓の音以外、素敵な音はない。
死は、自らこの世界から絶つことができる。
神が殺すのではない。
自分の意思で死ぬ。
誰かに殺されるのではなく、自分の手で死ぬのが、
この世で一番綺麗な死に方だ
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作者名：愛 | 作成日時：2022年10月19日 23時
