◆ on a quiet night 4 ◆ ページ45
「なんで…」
「他人のせいで負わされた怪我を勲章って言えるの本当に凄いよ。…まじでかっけぇ」
両手で隠した胸奥がずきんと痛む。
だからこそ、見せたのに何故受け入れてしまうのだろうか。
「ずるいです…だるまさんは本当に」
肩に掛けられたタオルケットをギュッと握り締め、上半身が見えないようにする。けれど、不意に抱かれた腰から直接伝わる腕の逞しさに気付き、ぶわぁっと顔が熱くなった。
背中を見せる事だけを考えていたのでが上半身半裸なのが今更、物凄く恥ずかしくなってくる。
けれど、だるまさんはずっと黙ってて、背中の火傷に対して自分の傷のように心を痛めてくれていて…着替えたいと中々言い出せる雰囲気では無い。自分から脱いだのが立場を悪くさせていた。
「あ、あのっ、だるまさん…」
「…ほんと、ごめんな」
「…？」
消えそうな声音の謝罪に首を傾げているとだるまさんは腹の上で自分の腕を交差し、より身体を密着させる。
肩上に乗せられた顎。耳に吹きかかる彼の吐息が更に熱を炙り、思考を停止していく。
カチカチと秒針の音がやけに五月蝿く聴こえ、今何分経ったのかも分からなくなってき始めた。
「……その、怒らないで聞いて欲しいんだけど」
聞いて欲しい内容を聞く前に素早く抱っこされて、近くにあったソファに降ろされ、そのまま自然と押し倒される。
前が見えないようにタオルケットを交差する手を包まれ、制止の言葉を投げかけようと彼を見上げれば、獣のようにギラついた黄金色の瞳が此方を俯瞰していた。
「これ、襲っていいやつ？」
「いや、そういう、訳ではっ…背中の火傷、見て…その」
「…分かってる。そうだと分かってるけど…あー…俺、みっともなくてごめん。まじで…許されたと勘違いしちゃった」
彼視点から見れば、私の格好は完全に誘っている構図である。
だからこそ、わざわざ聞いて確認を取ってくれるだけでありがたいし…彼は本当に優しいのだと分かる。
「どう、したいですか…？」
「……えっ？」
自分でも何を言ったのか、分からない。
気付けば口から零れていたのだ。
なんで、私…こんなことを。
だって、今のは…彼を受け入れるという事と同義の発言だと分かっていただろうに、なんで。
「今っ…なんて…？」
「…だるまさんは、どうしたいですか」
揺らぐ黄金色の双眸。
理性と本能の板挟みになり苦悩しているのが分かった。
◆ on a quiet night 5 ◆→←◆ on a quiet night 3 ◆
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1025人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
うぱ(プロフ) - 設定とか言葉遣いとかとにかく全部が好きで一気見しちゃいました。特に不穏でこわこわなボスが大好き過ぎて何度もそこを読み返してます。臨場感が凄くて読んでいる時凄くドキドキしました。これからもこりんさんの作品を楽しみにしております。 (12月20日 23時) (
レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
こりん(プロフ) - ガガさん» コメントありがとうございます。そのように仰って頂けてとても嬉しいです！ありがとうございます！こちらこそ、作品を読んで頂き誠にありがとうございます。更新頑張って参ります！ (11月10日 19時) (レス) id: 56f635f916 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - とっっても面白いですわくわくして読んでます、続きが本当に楽しみです！！更新を楽しみにお仕事頑張れそうです、素敵なお話ありがとうございます🙏 (11月6日 13時) (レス) @page30 id: cfa21872f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こりん
| 作成日時：2023年10月29日 17時
