◇ A poor night 2 ◇ ページ31
少しの間だけ身体をだるまさんに身を預ける。
心地良い体温が緊張を和らげてくれた。
数分後にだるまさんがゆっくりと離れていく。
表情は先程より良くなったが今度は何処か神妙な面持ちに変わっており、真剣な眼差しが此方を射抜く。
「どうしました?」
「A、大事な話がある」
「何でしょう」
「怖い話になるんだけど今回、Aは誰かに狙われて襲われたと俺は考えてる。理由はまだ分からない。でも、根拠はAを襲った男にAを見つけ出せるような知能は残っていなかった。だから、Aを襲わせるように仕向けた奴がいると考えてる」
それは考えすぎではないだろうかと直感的に思ってしまったが、ギャングのボスとしての勘が働いたのだろうか。
もし、だるまさんの言うことが本当ならば私は誰かに狙われている。一般市民である私が何故、狙われるのか分からないが…もし、本当にそうだったらかなりまずいだろう。
私はガンライセンスを持っていないし銃の取り扱いもちんぷんかんぷん。護身術は職場で講習があり、一応習ってはいるが実用レベルかと聞かれたら首を傾げてしまう。
「A、少しの間だけ俺の元で保護させてくれないか」
「…警察の人がいます。事情を話せば保護してくれます」
「そうやね。これは個人的なお願いになっちゃうってもの分かってる。でも、もう…俺の目が無いところでAがこんな目に遭うのは耐えられない」
「嬉しい、ですけど…私、会社クビになっちゃいます」
「大丈夫。アルスさんやイブラヒム、セリーに診断書発行してもらう。医者が発行するなら、会社は文句言えんし警察も襲われたって知ってるから何かあれば応じてくれる。全部片付いたら、元の生活に戻すって約束する」
ちゃんと、私の生活も考えての案らしい。
問う全ての疑問に応えられる手札を持った状態で話を持ち掛けているのだ。
あまりにも抜け目が無さすぎる。
私では彼の粗を見つけ出す事は出来ない。
「…もし、嫌だって言ったら?」
万策尽きた私は我ながら嫌な質問をする。
困ったように眉を中央に寄せ、だるまさんは息を吐き出し軽く笑う。伸ばされた手が頬を撫で、横髪を指で払った。
思わず見惚れてしまう所作に目を奪われてしまっているとだるまさんは酷く申し訳無さそうに、言葉を紡いだ。
「お願いじゃなくて、強制になっちゃうかも。ほんとごめん。でも、俺の全てを失いたくないから。嫌われてでもAの事を守りたい」
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うぱ(プロフ) - 設定とか言葉遣いとかとにかく全部が好きで一気見しちゃいました。特に不穏でこわこわなボスが大好き過ぎて何度もそこを読み返してます。臨場感が凄くて読んでいる時凄くドキドキしました。これからもこりんさんの作品を楽しみにしております。 (12月20日 23時) (レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
こりん(プロフ) - ガガさん» コメントありがとうございます。そのように仰って頂けてとても嬉しいです!ありがとうございます!こちらこそ、作品を読んで頂き誠にありがとうございます。更新頑張って参ります! (11月10日 19時) (レス) id: 56f635f916 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - とっっても面白いですわくわくして読んでます、続きが本当に楽しみです!!更新を楽しみにお仕事頑張れそうです、素敵なお話ありがとうございます🙏 (11月6日 13時) (レス) @page30 id: cfa21872f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こりん | 作成日時:2023年10月29日 17時