◇ A poor night ◇ ページ30
「…ん」
寝心地の良さで自分の部屋では無いと分かる。
瞼を徐々に開けると青白い月光がカーテンの隙間から差し込み、少しだけ明るくなっている部屋を一望する。
月の淡い光を受け、グレージュの髪を輝かせただるまさんが傍で片方の手を握ったまま、布団を被った私の腹ら辺に顔を伏せて眠っていた。
私が起きた事にすぐに気付いたらしく、ピクッと瞼が動き、隠されていた黄金色の瞳と目が合う。
「おはよう…では無いですね」
「…ふふ、そうやな。傷、痛い？」
「セリーさんとアルスさんのお陰で全然痛くないですよ」
「そっか…俺も見てたしアルスさんからも聞いたんだけど無理してるでしょ。怖かっただろうに、そんな気丈に振るわんでもええんよ。あの時だって…ずっと肩震えてたし」
「…確かにちょっと怖かったですけど今は本当に大丈夫です。だるまさんが隣に居てくれますし、怖いもん無しです」
怪我を負わされ、酷い目にも合ったのに心は落ち着いている。恐怖に呑まれそうになっても、この人が手を握ってくれるだけで振り払えていた。
微笑みを浮かべ、笑いかければだるまさんは眉を八の字に歪め、残されていた片腕を背に回し、抱き締める。石鹸の匂いが不意に鼻腔を掠めた。
肩口に額を埋め、存在を確かめるように温もりに縋るだるまさんは迷子になった子供のようで、普段なら抵抗するが…出来なかった。
「…守れなくて本当にごめん」
弱々しい声が暗闇に吸われていく。
細身だが筋肉がしっかりと付いた背中はいつも大きく見えるが今は酷く小さく見え、此方も腕を回さなければ存在が分から無くなってしまうだろう。
おずおずと彼の背中に手を回し、あやす様に撫でる。
「だるまさん、もうそれは無しです」
「でも、俺は…」
「私、何回もありがとうって言ったのに返事を返して貰えなくて…怒ったりしてますので。返してくれなきゃ…そうですね、手が出ると思います。あいつ殴った時よりもいいパンチが出そうです」
告白の返事を断っている私が言えた事ではないのだが。
自分でもずるいと思ったものの、こうしなければ彼は一生、何も悪くないのに謝り続けてしまうだろう。
「助けてくれてありがとうございます、だるまさん」
「…どう、いたしまして」
いつもの返事とは全く違う歯切れの悪い受け取りである。
けれど、彼の背負った責任感を少しでも取り除けたならそれで良い。私が背負わせてしまったものでもある。
「もうちょっとこのままでえぇ？」
「……はい」
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うぱ(プロフ) - 設定とか言葉遣いとかとにかく全部が好きで一気見しちゃいました。特に不穏でこわこわなボスが大好き過ぎて何度もそこを読み返してます。臨場感が凄くて読んでいる時凄くドキドキしました。これからもこりんさんの作品を楽しみにしております。 (12月20日 23時) (
レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
こりん(プロフ) - ガガさん» コメントありがとうございます。そのように仰って頂けてとても嬉しいです！ありがとうございます！こちらこそ、作品を読んで頂き誠にありがとうございます。更新頑張って参ります！ (11月10日 19時) (レス) id: 56f635f916 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - とっっても面白いですわくわくして読んでます、続きが本当に楽しみです！！更新を楽しみにお仕事頑張れそうです、素敵なお話ありがとうございます🙏 (11月6日 13時) (レス) @page30 id: cfa21872f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こりん
| 作成日時：2023年10月29日 17時
