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◇ You mean the world to me 7 ◇ ページ16

「…さっきから呼吸が乱れてるよ」


恐怖で滲み出た汗が髪を濡らし、肌に張り付く。
普通ならば触れたくないはず。だが、彼は遠慮無しに触れて乱れた髪を愛玩するような手つきで整えようとする。


「落ち着いて。怖い事はもうしないよ」


幼児をあやすような優しい手つきな筈なのに、恐ろしく感じてしまう。先程の乱暴な扱いとは真逆で、いつもと同じ紳士的なのに何か違う。触れた頬の熱を奪われているような感覚が正常な思考を蝕む。

ぽろぽろと零れ始めた涙は恐怖が要因で流れたのだろうか。
いや違う。恐怖はひとつの要因というだけであって、そんな単純な理由で流しているわけじゃない。

私は1ヶ月、彼の誠意をこの身で受けていたのに。
自惚れでは無いと分かるほどの好意を貰っていたのに。

なんで、分からないんだろう。
本当に馬鹿なのは私だ。

黄金色の双眸と視線が交わった瞬間、彼の途方もない悲しみが溢れこんできた。
こっぴどくフラれた時でも見せない貌。どういう感情を抱いているのか分からない。
でも、彼のそんな表情を見てしまえば胸が痛んでしまう。


「ごめん、なさい。私の為に嫌な事をさせてしまって」
「なんで?俺は、ずっとこうしたかったってのはホントよ。その気になれば、今からキスだってするし」
「私に対して貴方が酷い事を出来ないこと、知っています…。1か月間、貴方が真正面から来てくれてから、私も真正面から貴方を見てきた。…手を出さないじゃなくて、手が出せない。だから、こんなに近いのにキスしないんですよね?」


私の問い掛けにだるまさんは瞳を揺らすことは無い。


「Aは俺をなんだと思ってるの。手が出せないヘタレとか思っちゃってる?…まじで抱かれてぇの?」
「……ほら、その言葉が出るってことは最初からする気なかったんでしょう?貴方は私に対して、信じられない程に甘くて優しいってことを…知ってます。これって自惚れですか?」
「………」


私達はきっと世間一般から見れば奇妙な関係だ。
告白をして、告白を断る。それだけの関係だったのにいつの間にか互いが分かるようになるまで距離が狭まっていた。

黙ったのは、だるまさんの方だった。
手の拘束が緩み、頬を撫でていた手が下がっていく。
寝転ぶ私の横に胡座をかき、額に指を当てながら参ったような声音で、


「あぁもうっ…好きな子にそんな事言われたらそうだと応えたくなっちゃうやんか」


と私の知るだるまさんが困ったようにそう呟いた。

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うぱ(プロフ) - 設定とか言葉遣いとかとにかく全部が好きで一気見しちゃいました。特に不穏でこわこわなボスが大好き過ぎて何度もそこを読み返してます。臨場感が凄くて読んでいる時凄くドキドキしました。これからもこりんさんの作品を楽しみにしております。 (12月20日 23時) (レス) @page14 id: ea61eec359 (このIDを非表示/違反報告)
こりん(プロフ) - ガガさん» コメントありがとうございます。そのように仰って頂けてとても嬉しいです!ありがとうございます!こちらこそ、作品を読んで頂き誠にありがとうございます。更新頑張って参ります! (11月10日 19時) (レス) id: 56f635f916 (このIDを非表示/違反報告)
ガガ - とっっても面白いですわくわくして読んでます、続きが本当に楽しみです!!更新を楽しみにお仕事頑張れそうです、素敵なお話ありがとうございます🙏 (11月6日 13時) (レス) @page30 id: cfa21872f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:こりん | 作成日時:2023年10月29日 17時

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