藍色の誘拐犯 2【神威】

___55話___ もうひとつの未来 ページ23

□







｢あ、待ってください私、働いていたところにちゃんとお礼を言わなくちゃ。あと急に辞めるのは…｣

神威｢大丈夫だよ、Aに合わせるから。
いつ迎えに来ればいい？｣

｢……すみませんやっぱり、今から挨拶に行ってもいいですか｣



すぐに辞めるのは迷惑になるかなと思ったけど、振ったあの彼と顔を合わせる事になるのは憂鬱で、勇気をだして事情を話して、許してもらおうと思った。



神威｢そう？分かった。そういえば店の女将さんに Aの婚約者ですって説明しちゃった｣

｢ええ！そ、そうなんですか、店来てたんだ…｣

神威｢今日突き止めたばかりだけどね。いずれ配偶者になるし、俺からもお願いして辞めさせてもらおうか｣



配偶者って確か夫婦って意味だよね…どうしよう顔が、にやけてきちゃう。

店に着くなり、お母さんに頭を下げて辞めたい事を伝えると。私が想像してたよりもずっと優しく了承をくれた。｢幸せになってね｣なんて優しく笑うから、思わず泣いて抱き着いた。


店を後にして、港へ向かい、少し外観は変わっても見慣れた船が視界に入った時は、懐かしくてずっと眺めていたいくらい。
私の一生が欲しいなんてプロポーズじみた事も言われて、こんなの、私宇宙で一番の幸せ者じゃん。なんて自惚れちゃう。


…あの日、ビルの屋上から私は飛んだ。
全てが終わる筈だった。貴方と出会わなければ。

私達(いのち)が終わる日まで、もう二度と手を離さない事を誓って、彼は今日も悪びれなく地獄から私を攫っていった。ただ、それだけの話。









[もうひとつの未来]




□

あとがき→←___54話___ 神威side

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す