藍色の誘拐犯【神威】

___14話___ ページ14

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神威｢どうしたの、これ｣




一番初めに聞かれた時みたいに、感情の読めない顔で 私の左腕を掴んで見てくる。

とっさに手を引っ込めようとしても、力が強くてビクともしない。



神威｢自分で切ったの？｣

｢気持ち悪いですよね｣



言葉を被せるように言った。

相手よりも先に 自分で自分を罵倒すれば、受けるダメージが少し減るから。その代わり涙が零れてしまった。




神威｢A｣

｢いいですよ気遣わなくて。馬鹿にされるの慣れて｣



言い終わる前に抱き締められていて、服に血がつくとか、そういうの ためらう様子もなく一瞬の間に。



神威｢痛くないの｣

｢痛くないです｣

神威｢痛いでしょ。こんなに泣いてるのに｣



再び反論しようとすると、私の心臓辺りに指を置いて
胸(ここ)が 痛いでしょ？と言いたげに少し笑いかけてくる。



｢どうしてそんなに、悲しい顔するんですか｣



怒られると思っていたし、少なくとも気味悪がられると思ってた。

なのにどうして、泣いてる私よりも悲しそうに笑うの。




神威｢…AよりもAのこと、大事にしたいと思ってるんだ。本当に｣

｢っ…ほんと、意味分かりません｣



さっきよりも、ぎゅうっと力を強めて また抱き締められて、恥ずかしい事に頭を撫でられて落ち着いてしまっている。

段々と心地いい胸の中で、甘えたくなってしまう。




神威｢辛かったね｣



不意に、耳元で優しく言われたその一言。

そのたった一言で、何かの糸がプツンと切れて、涙腺が壊れたのかと思うくらい涙が止まらなくなった。



｢言わないで…っください。今 優しくされると、また泣く…から｣

神威｢泣いたらいいよ。泣ける時に沢山｣



その力強い抱擁に、温かい体温に、身を任せて、もう息が出来なくなるくらい声を上げて、神威さんの胸で泣いてしまった。






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