2話 朝と弟は鬼畜 ページ2
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朝。誰かに布団を思い切り剥ぎ取られる感覚で目が覚めた。
急に訪れた寒さが体を震わせ、無意識に布団を引き寄せようと手を伸ばす。しかし、いくら手を伸ばしてみても、温かい毛布の感触は戻って来なかった。どこかひんやりとした空気が、より一層体を縮こませる。
その数十秒後、勢いよくカーテンが開かれる音と共に、眩しいくらいの朝日が部屋全体を照らした。その明るさは、まだ半分夢の中の状態の私には十分過ぎる程だった。
思わず顔をしかめながら、ほとんどうつ伏せに近い格好になる。
「……おい」
頭上で声がした。
何度も聞き慣れた声に、私は背を向ける形で再び寝返りをうつ。その動作が、全てを物語っていた。
「……おい、いい加減に起きろ」
数秒程間を置いた後、再び同じ声の主が低い声でこちらに語り掛けてきた。先程よりも苛立ちを含んだように聞こえたのは、気のせいではないはずだ。
これ以上応答しないと本気で叩き起こされそうなので、仕方なく私は寝ぼけた状態のまま無理やり上半身を起こした。
体がだるい。昨日夜遅くまで起きていたせいか、頭が回らない。今すぐにでも布団にくるまりたい衝動に駆られる。
私が顔を上げた先にいたのは、腕を組みこちらを呆れているような、馬鹿にしているような表情で見ている───弟だった。しかも、何故かやたらとため息を繰り返している。
「はあ……わざわざ起こしに来てやったんだ。一度で起きろ、A」
「……別に、誰も起こしてなんて頼んでないでしょ」
弟の上から目線に少し不満を抱き、そっぽを向きながら言った。すると、弟は何の間髪も入れずに私の両頬を思い切りつねってきた。
「……うわっ、ちょっと、痛い!いひゃい!」
上手く滑舌が回っていない私を一瞥し、更に真顔でほっぺたを引っ張る。今現在どんな感情で姉の頬をつねっているのか心の中を覗いてみたい。
十秒程で、彼はパッと手を離した。私は咄嗟に両手で頬を包む。
「……これで、少しは目が覚めただろ」
いや、確かに目は覚めたけれども。
もうちょっと違うやり方があったのでは、とこちらを見下ろす弟に疑念の視線を向けながら、私は赤くなっているであろうほっぺたをさする。普通に痛い。
「もうちょっとさ、ほら、お姉ちゃんに優しくしようとか思わないの?」
「思わない」
……即答か。
「……まあ、姉と言っても、所詮双子で年齢は同じだしね」
そう言うと、征十郎は私を小馬鹿にするように軽く微笑んだ。
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作者名:翡翠 | 作成日時:2019年5月26日 20時