10話 裏の疲労話 ページ10
半ば無理矢理桃井を引き連れて、私達は教室に戻ってきた。
とりあえず自席に座り、桃井は私の前の席に腰を下ろす。昼休みは基本教室にいない生徒の方が多いため、誰の席だろうと使いたい放題だ。
私がまるで何事もなかったかのように弁当箱の包みを開こうとすると、「ちょっとAちゃん?」と桃井から声が掛かった。
「ちゃーんと説明してくれるんだよね?」
私は、今朝から積もり続けた鬱憤を一つずつ話し始めた。まあ、ほとんどの話題は愛莉が関係していたけど。
話し始めると、これが意外に止まらないものである。最初は相槌を打つだけだった桃井も、次第に共感し始めていた。
「……そうなんだよね。部活も平気で遅れてくるじゃない?しかも、可愛いからって許されてるところがあるっていうか」
「そう。こっちも怒るに怒れない。極めつけは部員に少なからず甘やかされてるところ」
「それ!何でだろうね、後輩っていうのもあるかもしれないけど……」
「単純に好きなんでしょ。黄瀬とかあからさまにそうじゃん」
「んー、まあきーちゃんは何でも大袈裟な反応するからね。嫌いな人にはとことん無視だし」
「……あれから顔を奪ったら何も残らなそうだね」
「それは言い過ぎだよ」
後半は黄瀬に対する愚痴のように聞こえたかもしれないが、数分話すだけでも少し気分がすっきりした。普段家にも学校にも、ましてや部活中になんて、こんなことを話せる場所はほとんどないからである。
ただ、相手が桃井だからといって全てを打ち明けられる訳ではなかった。
実際、私は桃井に恋愛相談をしたことが一度もない。本当に成す術がなくなった場合は、自ら打ち明ける勇気が必要なのはわかっていた。だが、その勇気が未だに出て来ないのが現状だ。
「どうしたの、Aちゃん?」
……思いきって全部言ってしまおうか。
桃井は信用出来るし、他の者に拡散する心配はしていない。だがもしもの場合、近くに青峰や黒子という存在もいるため、そのまま赤司にまで流れ出てしまうと思うとやはり怖かった。
本当にそうなってしまった場合、私は確実にバスケ部に居づらくなるだろう。最悪、辞める選択肢も考えることになる。
そんな個人的感情で簡単に辞められる訳がないが、あくまで想定しておく必要があったのだ。少なくとも、今は自分一人で頑張ろうという結論に至った。
「……何でもない」
「そう?」
桃井は整った顔を緩ませて微笑んだ。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時