5話 敵対心とライバル ページ5
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愛莉は私の方に視線を向けると、表面上愛想を振り撒きながら軽く頭を下げてきた。
「おはようございます、七瀬先輩」
「……おはよ」
挨拶を返さないのも変だったので、渋々適当に返す。しかし、そんな私の態度をまるで気にも留めない様子で愛莉は話を続ける。
「先輩は、毎朝何時くらいに学校来ているんですか?」
「……あんたが来る三十分以上前だけど」
皮肉を込めて、少し嫌みたらしく言ってみる。
「凄いですね!私なんか朝中々起きれなくて、毎回遅刻ギリギリになっちゃうんですよ」
「知ってる」
「どうしたら、もっと早く起きられるようになるんですかね?」
「……さあ。私に聞かれても困るし」
それに、遅刻したくせに堂々と体育館の真ん中から入って来て他の奴と喋っている暇があるなら早く自分の仕事をやって欲しいんだけど。
なるべく怒りを表に出さないように、出さないようにと堪える内に、私の心は苛立ちで膨れ上がった。
別に、マネージャー自体が大変だからと言う理由はない。最悪一人でも出来る。朝なら。
ただ、愛莉がいることにより練習が中断されるのが嫌なのだ。
途中から来ればどちらにしろ目立つし、少なからず駆け寄って行く者がいる。それに、朝練習はそれほど長くないため顧問の先生は基本来ない。つまり、今は何をしようが自由な環境なのだ。
ただ、それはまとめる人物が誰もいなかった場合の話である。
「……黄瀬、お前は練習に戻れ。愛莉は早く荷物をまとめて桃井達と合流しろ」
「あ、赤司っち」
有無を言わせない平坦な声で、赤司は二人に告げた。彼に言われては、黄瀬も「……はい」と素直に返事するしかない。
「愛莉。朝練に来るのは良いが、毎回時間ギリギリに来るのはどうかと思うよ?」
「う、すみません……。早く起きようと頑張ってはいるんですが」
「まあ、無理しない程度で良いから。最悪午後の練習だけでも大丈夫だよ」
「そ、そんな!先輩達が頑張っているのに、私だけ楽なんて出来ません。明日から絶対早く来てみせます!」
「威勢が良いね。でも体調だけ崩さないように」
そう言うと赤司は愛莉の頭をぽんっと撫で、自身も練習に合流した。
……私が愛莉を好きではない理由。
「えへへ……征十郎先輩に頭撫でて貰っちゃいました」
「……そっか、良かったね」
単純な話、彼女が赤司に気に入られているからである。
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翡翠(プロフ) - 七奈那さん» コメントありがとうございます!返信が遅くなってしまい本当にごめんなさい!面白いといって頂けてとても嬉しいです。最近忙しくて全く更新できていませんが、早く続きを作るようがんばります! (2020年3月4日 0時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
七奈那(プロフ) - いいお話ですね。とても面白いです。早く続きが読みたいです!応援してます。完結するのが楽しみです (2020年2月11日 17時) (レス) id: 98ad0ce5fe (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 花音さん» コメントありがとうございます。この作品を読んでもらえてとても嬉しいです!最近更新できていなくて本当にごめんなさい。私も完結させたいので、また近いうちに更新できるよう頑張ります。引き続きよろしくお願いします。 (2019年11月6日 22時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
花音 - 作品読ませて頂きました。凄く面白いですね。もう更新なさらないのですか?できれば完結させて欲しいです。待ってます (2019年11月6日 21時) (レス) id: ac5c9fd8b6 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 黛夕那(#・∀・#)さん» コメントありがとうございます!読んでもらえてとても嬉しいです!なるべく早く更新できるように頑張りますね! (2019年9月1日 11時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年12月23日 16時