42話 転んだ拍子に ページ43
そう言えば、と今朝凌介から言われた言葉を思い出す。今の今まですっかり忘れていた。
しかし、問題は私ではない。たった今、赤司の誤解を招くような発言を聞いた桃井と静香だ。
目が点になっている二人を前にして、私はどうすればいいのかわからなかった。隣にいた赤司は、複雑そうな表情でもう一度ため息を付く。
まるで「やらかした」と言うように。
頭の回転が速い桃井は、いち早く状況を理解したらしくすぐさまこちらに尋ねてきた。
「……Aちゃん。昨日の今日で、もう赤司君と一緒に帰るの?」
「あ……う、うん。色々事情があって」
否定する訳にもいかず、小さく頷いた。戸惑う私の代わりに、桃井は今度は赤司を見る。それも、かなり輝いた瞳で。
「……赤司君」
「何だ」
「……意外に、手が早いんだね!?」
「何故そうなる。それに、絶対何か勘違いしているだろ」
「勘違いするも何も、思春期真っ只中の男女二人が一緒に帰るってことは、もう完全にそういうことなんだよね?わかる、わかるよ!」
「どういうことだ……」
話にならない、と言うように赤司は首を横に振った。私も正直、何故赤司と帰ることで二人がそんなに騒ぐのかよくわからない。誰と登下校したって、別に個人の自由じゃないか。
そういう赤司も同じ考えだったのだろう。
「……A。早く荷物をまとめてこい」
そう言われた時は、内心少し嬉しかった。私は早く帰りたいと思うあまり、ろくに返事もせず気が付けば駆け出していた。
部室の唯一の出入口であるドアの前まで来て、ドアノブに手をかける。すると、急に体ごと前に引っ張られる感覚がした。恐らく、同時に反対側から誰かが開けたのだ。
「うわっ」
開けた勢いがよかったものだから、そのままの流れで私はドアの外にいた人物にぶつかる。端から見れば、その人に正面から抱きつく形になっていることだろう。反射的に受け止められる感触が伝わってきた。
「A……?」
「あれ、前の方何かあったんスか?」
中からも外からも、驚きや疑問の声が次々と飛び交う。私は顔を上げるのが怖くて、その場で俯いたまま震えることしか出来なかった。
「……だ、大丈夫か?」
頭上で声がした。
口をきゅっと結びながら、恐る恐る顔を上げる。そこには、眼鏡を掛けた彼が困惑したようにこちらを見つめている姿があった。
緑間だった。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時