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35話 一応先輩と後輩 ページ36

目の前には、一見しただけでも私と十センチは身長差がある静香が堂々と立っている。バスケ部員達を散々目の前で見た後だったのでそこまで感じなかったが、やはり女子にしては背が高い。

「ふーん」

静香はその整った顔を近付けながら、まじまじと私を凝視してきた。思わず目を逸らす。

「さつき先輩と一緒にいるってことは、この人も二年生?」

「そうだよ。犀川Aちゃんて言うの。昨日転入して来たばかりなんだ」

「へえ。じゃあ、A先輩って呼んでもいいですか?」

静香に微笑みかけられたが、なんと返せば良いかわからず、堪らずに桃井を見た。

「大丈夫だよAちゃん。こう見えても静香ちゃんいい子だから」

桃井が言うのなら心配はないだろう。私は軽く頷いた。

「……ところで、今日は何の補習だったの?」

「それが聞いてくださいよー。先生たら、毎日一教科ずつ出すのかと思えばまとめて全教科のプリントを出してきたんですよ、束で!」

「まあ、しょうがないんじゃない?むしろ今までが優し過ぎたんだよ」

「いやいや、私にとっては本当に地獄ですよ!だから、こっそり逃げ出して来ちゃいました」

「えっ?じゃあ部活してる場合じゃないじゃん!」

次々と繰り広げられる会話の速さに、頭がついていかない。私からすれば静香が授業をサボるようには見えなかったが、話の内容から大体の状況は察した。

桃井の言う通り、本当に補習を丸々投げ出してきて大丈夫なのだろうか。

「大丈夫ですよ先輩。心配しなくても、先生も毎回の補習の度に私が抜け出すんで半分もう諦めてるみたいです」

「うん。それ全然大丈夫じゃないからね?」

「もう、さつき先輩は頭が固いですよ。ねーA先輩!」

「へ……」

唐突に名前を呼ばれたかと思えば、静香は私の腕に自分の腕を絡めてきた。急に距離感が縮まり、私は思わず硬直してしまう。

「ちょっと、静香ちゃん!Aちゃんは超デリケートなんだから急にそういうことしない!」

桃井は、慌てて静香を引き剥がそうと私達の間に割り込んだ。

そんな中、一人余裕そうに口角を上げている静香は小悪魔じみた口調で言った。

「ふふ、これからよろしくお願いしますね、先輩!」

「……は、はい……」

まだバスケ部に入ると決まった訳じゃなかったが、その威圧に押され自然と口から返事のようなものが漏れた。

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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時

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