27話 無自覚な2人 ページ28
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食べ始めて、既に五分が経とうとしていた。
沈黙が続くかと思いきや、予想より幾分か会話が弾んだ。
桃井と赤司は、主に部活関連の話で盛り上がった。他に共通の話題がなかったのもあるが、お互い無言のままよりはマシだった。
最初、Aは二人の会話の邪魔をしないように黙って弁当を食べていた。自ら間に入れなかったのもあるが、途中桃井が話を振ったりするうちに、気付けば三人で楽しく会食していた。
この昼休み中、桃井は思ったことが二つある。
一つは、赤司が何気に話しやすかったことだ。
普段は冷静沈着、周りに一目置かれた存在であり、正直のところ気軽に話し掛けにくい印象だった。しかし実際にこうした機会を設けると、意外と会話が尽きないものだなと思った。
まあ、これはあくまで一つ目である。問題はもう一つの方だった。
それから更に五分後のことである。
「……Aのその玉子焼き、美味しそうだな」
赤司がそうしてAに声を掛けた。そこまでは何ともないのだが。
「本当?お母さんが作ってくれたの。……良かったら食べる?」
「いいのか?ありがとう」
「……あっ、それ私の食べかけだよ」
「別に構わない。……っ、美味しい」
「ね、美味しいよね!」
「良ければ、俺の弁当の中で欲しい物あげるよ」
「いいの?じゃあ……これ」
「唐揚げか。それは俺も好きだな」
「パクっ……美味しい!」
「それは良かった」
その時一瞬、自分は何を見せられているのだろうかという思考に陥った。
……て言うか、お弁当の中身交換って普通男女間でするものじゃないでしょ。赤司君とか、何さらっとAちゃんの食べかけを貰ってるの?しかも二人共、何で学校内で堂々とそんなことが出来るの?
もしかして、自覚してる?自覚あった上で交換してるの?
考えれば考える程余計にわからなくなったので、桃井は思い切って強行突破する決心をした。
「……ねえ、二人共」
「何?」
振り返る時、無意識にやたら揃っていたのが何となく可笑しかった。
「いや、その、さっきの……」
「さっき?」
「あ、赤司君がAちゃんの玉子焼き食べたの、ってか、間接キス……じゃない?」
極力笑い飛ばす勢いで言ったが、真面目な二人は正面から受け取ったらしく、暫くの沈黙後再度こちらを見た。
「……間接キスって何?」
「へ?」
またもや重なった声に、二人共が素だとわかった瞬間何故か聞いた自分が一番恥ずかしくなった桃井だった。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時