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26話 中庭と昼休み ページ27

結局、事前に約束していた食堂へ行くことを止め、教室も止め、たどり着いた場所は人気のない中庭だった。

「……確かに、ここなら誰もいないけど」

もう少しマシな場所があったんじゃ、と桃井は若干呆れたように辺りを見回す。

「別にいいじゃないか。貸切状態だ」

何がそんなに彼の気持ちを向上させているのか、不思議と赤司は上機嫌だった。

極力綺麗なテーブルを探し、腰掛ける。

「……それに、ここ以外にAが平気そうな場所はなかったからね」

「う……迷惑掛けて、ごめんなさい」

そう。こんな、まさに誰も近寄らなさそうな場所で食べることになった原因も、根本は私にあるのだ。

仮に一人で寂しく食べることになった時は、ここに来ようと密かに思っていた程だった。

「……て言うか、本当に良かったのかな?」

「何がだ?」

「ミドリン達だよ!」

桃井が、赤司の向かい側の長椅子に座りながら言った。

「まあ、大丈夫だろう。俺達が来ていないからといって、何となく用事があるくらいにしか思わないはずだ」

「……うーん、案外そうかもね。なんかミドリン以外はそういうの全く気にしなさそうだし」

「確かにな」

私はどちらの隣に座ろうか迷った挙げ句、何となく桃井の方を選んだ。

「……みどりんって、さっき言ってた?」

「緑間のことだよ」

赤司が弁当の包みを広げる。それから、付け足すように言った。「因みに、同じクラスだよ」

「そ、そうなの?」

「うん。えっとね、髪が緑色の背の高い男の子だよ」

「………そ、そうなんだ」

私は曖昧な記憶を探る。確か、眼鏡を掛けていたような気がしなくもない。

どことなく雰囲気が兄に似ていたのと、特徴的な髪色が印象に残っており、すぐに想像することが出来た。

桃井が横から「ついでに言うとね、」と口を挟む。

「他の一緒に食べる予定だった四人も皆、同じクラスなんだよ」

「……へえ」

まさかの全員がクラスメイトだったと言う衝撃の事実よりも先に、思ったより自分の視野が狭かったことに今更の如く気が付いた。しかし、赤と桃と緑とくれば、次は大体想像がつくような……。

そんな風に思いながら、私は弁当を広げた。昨日と同様、母が朝からせっせと作ってくれたものだ。ちゃんと私の好きな玉子焼きも入っていた。

「じゃあ……」

「いただきます」

三人の声が重なる。

こうして、私達の気まずい昼食は幕を開けた。

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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時

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