20話 噂と現在の状況 ページ21
学校に着いた途端、正確にはそれ以前から、複数の視線がこちら向けられていることに気が付いた。いや、
恐らく原因は、二つだ。一つは、昨日の朱音との件である。曰く「あの美人と一緒に車に乗っていた謎の女の子」として、私は一部の生徒達に認識されているらしい。
所詮は姉妹だから、別に勘違いされても問題はなかった。目立つのだけは絶対に嫌だけど。
───問題は、二つ目にあった。
*
「ねえ、赤司君と犀川さんって、一体どういう関係なの?」
「何って、ただのクラスメイトだけど」
それ以外にどういう関係があるんだよ、と言わんばかりの目つきで、赤司は目の前の女子生徒を見据えた。苛立ちを抑えているように見えて、実際のところ威圧がありかなり怖い。
……教室に入るや否や、ずっとこの会話の繰り返しだった。私達の机の周りにはちょっとした人だかりが出来、隙あらばと言うようにぽんぽんと質問が飛んできた。
勿論、開口一番即座に否定した。……私じゃなくて、赤司が。
出会って僅か一日で既に付き合うって、普通あり得ないと思いますけど。仮にもし付き合っていたとして、私達二人揃ってどれだけ一目惚れ体質なの。
心の中では悪態を付きまくりつつも、実際のところはひたすら黙って座っているだけだった。その疑問への答えは至って簡単。
「……」
「さ、犀川さん?大丈夫?」
───こんな大勢に囲まれた中、平常心を保ち続けられる訳がない。
私は恐らく、生まれたての小鹿のように小刻みに震えていた。誰も頼れる人がいない中で、これ以上この場に留まるのは我慢の限界だった。
かと言って、赤司を頼る訳にもいかない。彼は今、私の分まで絶賛質問攻めにされている最中なのだ。始めこそ丁寧だった受け答えも、今では不満げなオーラを隠そうともしていなかった。
「犀川さんとは、本当にただのクラスメイトなの?」
「……だから、さっきからそう言っているよ」
「じゃあ、なんで一緒に登校して来たの?」
「それは……まあ、成り行きで」
「そこ重要だよね?」
「いや、だから……」
聞いている方が頭が可笑しくなりそうだ。私は何とかして震えを抑えようと、バレないようにスカートの裾を強く握り締めた。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時