13話 無駄に空いた距離 ページ14
───その後の末路。
「……」
「……」
気まずい沈黙が、二人の間を流れる。兄と言う最強の鉄壁が消えた途端、絶好の機会だと一気に質問攻めをしてきた彼女達から逃げるため、Aはやむを得ず教室を飛び出した。
……赤司を盾にして。
心の底から謝罪しながら、それでも盾を止める気は更々なく、とりあえず近くにあった保健室に入った。
生憎と、先生は出張でいなかった。不在なら不在の方が何かと都合が良い。鍵を閉め忘れたのだろう。とりあえず運が良かった。
そして現在。
「……犀川」
赤司が沈黙を破り、漸く声を発する。しかしAは返事をしない。
「犀川、聞こえているのか?」
「……は、はい」
Aは保健室のベッドの上の毛布にくるまりながら、か細い声を出した。赤司は、溜め息を付いて足を組み直す。
「……この間の距離はなんだ?」
二人の間は、大体五メートル近く間隔が空いていた。
───否、Aがそうさせた。
「……その、こうした方が、話しやすいと思っただけで……。別に、嫌だとか、そんなのじゃないです……多分」
「……」
これは嫌われていないと捉えて良いのだろうか。赤司は、少しAの方に近づいてみる。
「!」
Aは一層体を縮こまらせた。彼は余計不思議に思い尋ねる。
「俺のことが怖いのか?」
「……」
「遠慮しなくて良い。言いたいことがあるなら言ってくれ」
Aは、恐る恐る口を開いた。
「……その、髪が赤い、から」
「は……」
赤司はきょとんとしたように瞬きを数回してみせた。何となく、Aの考えていることを察する。そして、少し間を置いて答えた。
「……念の為に言っておくが、これは地毛だ」
「ええっ」
Aの顔が極端に驚きに変わる。根本的な考えを否定されたのだから当然と言えば当然だ。
「……じゃあ、他の人、達も?」
「他の人?」
「その、緑とか、黄色とか、ピンク……」
「……ああ。彼奴らも、皆地毛だよ」
「!?」
Aは、大きい目を更に大きく見開いた。そして、突然頬を赤くし、耐えきれないと言う代わりに毛布に顔を埋めた。自分が単に勘違いをしていただけと知り、言い表せない自己嫌悪に陥っているようだ。
「……ご、ごめん、なさい」
「いや、謝らなくて良い。初対面の者を外見で判断するのは、誰でも当然のことだからね」
赤司は、出来るだけAを怖がらせないようにと、優しい声色で言った。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時