12話 急用には逆らえない ページ13
プルルルルル……。
「!」
突如、何処からともなく携帯の着信音が教室に鳴り響いた。生徒達は困惑したように左右を確認する。そんな中凌介は、おもむろに携帯を取り出した。
画面に表示されている着信相手を見ると、即座に廊下の方へ出て行った。
「ごめん、A。ちょっと外す」
「……う、うん」
未だ余韻に浸る思いで、兄の消えた方を見つめる。
「……おい」
「……は、はいっ」
気が付けば、彼が私の方をじっと見つめていた。いつからそうしていたのだろうか。私は思わず盛大に肩を跳ね上がらせた。
「いつまで繋いでいるつもりだ?」
「……え?」
「手」
「手?……っあ、ご、ごめんなさい!」
思わず繋がれた手を勢いよく離した。私の手が冷たいのに対し、彼の手は温かかった。
*
数分後。話を終えたのか凌介が戻ってくる。その顔は、若干浮かない表情だった。
「……A」
「どうしたの、凌兄」
「その……ごめん、大学の方で急用が入った」
パチンッ、と顔の前で両手を合わせる。突然過ぎて何も言えず、目を丸くした。
「……え?」
「どうしても行かないといけないんだ。だから、俺はここで帰ることになるけど……」
「えっ、え……聞いてない」
私の心はちょっとしたパニックに近い状況に陥る。凌介は、慌てたように言った。
「ほ、ほら、帰りは朱音の奴が迎えに来るって言ってたし。それに、赤司君もいるからさ」
「え……」
ここで自分の名前が出たことに驚きを隠せない赤司。完全にこちらの二の舞だが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。
凌介が私の頭を撫でる。
「だから、大丈夫だから。半日、学校にいるだけだから。な?」
「……ん」
私は頷いた。納得したと言うよりも、頷くしかなかったの方が正しい。それを見て、凌介は安心したのか息を付いた。
「ごめんね、赤司君。悪いけど、Aのこと宜しく」
「……はい」
先程とは打って変わり、さらりと笑みを浮かべて赤司は言った。何処となく引き攣っているようにも見えたが。
凌介は再度私の頭を撫でると、じゃあ、と言って足早に教室を出て行った。
「……」
「……」
唯一の頼れる兄がいなくなった今、私は咄嗟に赤司の後ろへ隠れる他なかった。
「どうした?」
「……っ」
震える視線の先には、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせてこちらを見ている生徒達の姿があった。……しかも、大半が女子。
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翡翠(プロフ) - モトコさん» ありがとうございます。がんばって更新します! (2018年11月3日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
モトコ(プロフ) - 続きが気になります。更新頑張ってください! (2018年11月3日 23時) (レス) id: e294c9830f (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - ゆっくりノワールクローンNo.1さん» ありがとうございます!これからももっと面白くしていきたいと思います!頑張りますね! (2018年8月14日 23時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
ゆっくりノワールクローンNo.1(プロフ) - ものっそい好みの作品です!!夢主ちゃん世間知らずで可愛いし間接キス知らないとかもう悶えちゃいます!!これからも更新頑張ってください!! (2018年8月14日 20時) (レス) id: a2e5a81f28 (このIDを非表示/違反報告)
翡翠(プロフ) - 彩香さん» ありがとうございます(*≧∀≦*)!!がんばりますね! (2018年8月1日 9時) (レス) id: c98d4fab9f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:翡翠 | 作成日時:2018年7月12日 19時