夢というにはあまりにも【男主】【山田哲人】 (ページ44)

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其の３４ページ44

「ン……あ？」

窓から差し込む光で目覚めた瞬間、Aは「いっつ……！」と唸りながら頭を抱えた。二日酔いである。

顔をしかめながら周りを見渡すと、そこは自分の部屋だった。鞄がその辺に放り出されている。布団も敷かず、畳の上で寝ていたようだ。

「家、帰ってきたっけな……」

Aはそうなったきっかけが全く掴めなかった。痛む頭で、昨日のことを思い返してみる。

居酒屋で飲んだ後、焼き肉屋に行った。そしてまた何軒か店を回った……気がする。もう曖昧だ。そして、親切な誰かに助けられて、ベンチで介抱されて、そいつにタクシー呼んでもらって、家まで送ってもらって……

ああ、だから家に居るのかと納得した瞬間、脳裏にヤマダの顔がよぎった。あれ？とAは思った。親切な誰か、とは……ヤマダだったような気がしたのだ。

Aは確かに公園のベンチでヤマダと二人、くだらない話をして笑った覚えがあった。それを思い出した途端、親切な誰かのシルエットがすべてヤマダに置き換わる。

それでもAは、それが現実であると断定することは出来なかった。

「……夢、だったのか、あれは……どっち、なんだ？」

ひとりそうぼやき、Aはゆっくりと立ち上がった。窓の外を眺め、スマホで天気を確認する。今日こそは、試合ができそうな天気だった。昼寝でもして、早めに行こうと決意する。

「とりあえず風呂入るか……髪べったべただ……」

着ていたままの上着を脱いで、ズボンも脱いで、下着だけになったAはふらふらっと脱衣場に向かった。

通りかかった祖母にこっぴどく怒られたのは、また別の話である。