夢物語 ページ17
とうとう、悪夢を見てしまった。
おれは荒廃した大地の上で、何故か無数のスナップ写真に埋もれていた。手に取った一枚は今日別れを告げられた結実の写真だった。笑顔だったそれがぐにゃっと変化し、怒った顔に変わる。
「貴方面白くないよね。私が誘っても気のない返事ばっかり。本しか趣味がないの?惹かれた私がアホみたい」
「Aくん、ごめん、もう付き合えない」
「別れない?」
「友達に戻りたいかな、って……」
過去に付き合った女の子達のスナップ写真がふわりと浮き上がり、おれを罵倒し始める。色々な場所で、色々な手段で言われた別れの言葉が、ぐるぐると飛び交った。
「なんで人を好きになりたいの?なんで私達と付き合いたいの?断ればよかったじゃない」
「それは」
「私達を好きになりたい?そんなの紛い物の理由。あなたは恋を知りたいだけだった。職場のフェアのためか、恋愛小説を読むときに主人公の気持ちに入り込みたかったからかは知らないけど、とにかく全て自分のため」
「だからあなたは私達と付き合った!私達の気持ちも知らずに!」
「わからないならいっそ、断ってくれたらよかったのに」
がんがんと彼女達のことばが、頭を流れてその場に響き渡る。耳が痛くて苦しくて、おれは頭を抱えてその場にうずくまった。この嵐が収まってくれと願った。
「うわっ、何なんコレ?え、A?」
「……ヤマダ」
聞き覚えのあった関西訛りの男の声が、罵倒の隙間に滑り込んだ。すがってしまったのも当然だったと思う。今思えばあいつに助けを求めたなんて、どうかと思うけど……夢の中のおれは、少しだけ弱かったらしい。
「頼む、たすけてくれ。かりはかえすから……」
「……よしわかった。助けたるわ」
ヤマダはおれにも聞こえるくらいの力強い返事を返した。あいつがパッとメガネを外した瞬間、スーツはユニフォームに変わり、手元にはバットが現れる。
気配を感じたのか、スナップの怪物は全てあいつの方を向いた。おれを囲んでいた砂ぼこりは止んでいた。
ヘルメットを被り直して不敵に微笑んだヤマダに、怪物は次々と襲いかかっていった。
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