210話『アリババ目線』 ページ32
別れを翌日に控えた俺たちは、アクティアの港町に一泊することになった。
「Aさん元気ないね」
「そうですね……大丈夫でしょうか」
アラジンが心配げな顔をして、モルジアナも表情を曇らせる。
当の本人のAは、落ち込んだように目を伏せていた。
Aがこうなってしまったのは、白龍が突然、俺たちに一言もなく旅立ったからだ。
白龍が飛び立つ前に最後に話したAは、白龍を止められなかったと悔やんでいた。実際に何の話をしたのか、詳しくは知らない。
白龍……あいつの母親の話を聞いてようやく分かった。あいつの目はカシムが見せた目と似ていた。
もし、白龍が憎しみのままに母親を殺してしまったら────
慌てて首を振って思考を中止する。
このままだと悪い方向ばかりに考えてしまいそうだった。
今は、目の前で落ち込んでいるAを元気付けてやらないと。
俺は、Aが悩んでいるなら力になりたいし、Aが悲しんでいるなら元気付けてやりたい。
泣いているAは、俺が守るって決めたから。
「後悔って、後から悔いると書いて後悔なんだよ……後から悔いなければそれは後悔じゃないんだ……一体どこの誰がこんなに悲しい文字を作ったんだろうね……？」
「うう、苦しいよAさん」
宿にある店に入ると、いつの間にか膝の上にアラジンを置いていたAは俯いてぶつぶつと呟く。
抱き枕になったアラジンが窮屈そうに声を上げた。
「おいA、元気だそうぜ！うまいもんでも食ってさあ！」
バシン、と勢いよくAの背中を叩いて笑いかける。
顔を上げたAは、俺の顔を見ると安堵したような表情をした。
「っ、」
そんな、かお。
「──よし、そうだね！今日はいっぱい食べるよ！！」
パッ、と表情を変えてそう言ったAは、明るい調子で目の前の食事と向き合った。
アラジンやモルジアナもそれに安心したように笑って、食卓は賑やかなものになる。
「アリババも！ボーっとしてるとご飯なくなっちゃうよ！」
悪戯に笑うAがそう言って、ハッと意識が現実世界に引き戻される。
「あ、ああ……あ！！！おいアラジン！それ全部食うなよ！」
胸がむず痒くて堪らない。
俺は首を傾げながらも、席についた。
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中学生なのに暇人 - 鎬さん» こちらこそ読んでいただいて嬉しいです！コメありがとうございますがんばりますね！（ ; ; ） (2019年12月30日 0時) (
レス) id: 3eebcb6e18 (このIDを非表示/違反報告)
鎬 - マギ はアニメも漫画も見ていたのでこんなに面白い作品が読めて嬉しいです更新頑張ってください！！ (2019年12月21日 23時) (レス) id: b3f6bf7af3 (このIDを非表示/違反報告)
中学生なのに暇人 - 蓮さん» ありがとうございます（ ; ; ） (2019年12月19日 23時) (レス) id: 2882797249 (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - 好き (2019年12月12日 23時) (レス) id: 5ce3a7aa8e (このIDを非表示/違反報告)
中学生なのに暇人 - 氷空音さん» わわ！嬉しいです！読んでいただいてありがとうございます（ ; ; ）更新は不定期になってしまいますが頑張りますね！ (2019年12月1日 23時) (レス) id: 2882797249 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：中学生なのに暇人 | 作成日時：2019年10月8日 21時
