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その日の帰りのこと。
部活が早く終わったのでまだ空は明るいままの家路を辿っていると、見慣れた後ろ姿を見つけた。
「A、」
「!京治!もう帰りなの?」
「早く終わってさ」
立ち止まり振り返る彼女の元に、早足で向かう。彼女の右手には小さなビニール袋が。
「どこか寄ってたの?」
「ちょっとスーパー寄ってきた」
「ふうん、持とうか?」
「軽いし大丈夫だよ」
ふにゃりと目尻を下げた彼女に、そっか、と視線を外す。部屋着姿にサンダルで髪を一つにまとめた彼女は完全にオフモードのようで、見慣れてはいるはずなのだがどうも調子が狂いそうになる。
あっついねー、と片手でパタパタ仰ぐ彼女のうなじに汗が伝うのが目に入り、俺は慌てて鞄をゴソゴソと漁った。
「ん、これ。使ってないやつだから」
「え、いいよもうすぐ家だし」
「いいから」
そう言って無理やり彼女の首元にかけたのはスポーツ用のマフラータオル。
そのうなじがちらちらと視界に入るとどうしても手を伸ばしてしまいそうになるのだ。貸したのは彼女の為というよりむしろ俺自身の制御の為である。
「……京治は変わんないねー」
「そうかな」
「うん、彼女……とか、めっちゃ大切にされるんだろなあ」
「……」
生まれてきてからこの方、彼女以外を好きになったことなんてないのだ。
ただの幼馴染だけど一番大切にしてるよ、大切にしたいんだよ、A。
「……ああ、そういえばさ」
俺は自らその話題を避けた。逃げた。
彼女を大切にしたいからこそ、自身の感情を抑えなければならない。
どうしたの、と俺を見上げる彼女に今日の出来事を話した。
「今日、Aの担任とぶつかっちゃってさ、聞いたんだけど」
「……なにを?」
「俺の話、よくしてるの?俺の名前まで覚えられててさ」
「あー……うん、そだね、よくしてる、かも」
歯切れ悪く頷く彼女に少し違和感を覚えたが、はにかんだ様子で俯くから、それがまた可愛らしくて気がつけば、ぽん、と彼女の頭に触れていた。
「……かわい」
「なっ!そ、そういうのはダメ!」
誰にでもそういうこと言うのはよくない!と少し頬を膨らませて怒る彼女は、じゃあね!とそそくさとすぐ近くに見えた自身の家に走っていった。
誰にでもって言うけどさ
でもさ、そんなことAにしか言わないよ。
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あぁ(プロフ) - みないさん» ありがとうございます( ; _ ; )恐縮すぎて言葉が出ません(>_<)赤葦くんらしさを出しながら最後まで話を組み立てられたらな、と思っています。最後までお付き合いいただけると光栄です (2018年7月28日 21時) (レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
みない(プロフ) - 久しぶりに占ツクを開いたら大好きなあぁさんの作品が出てて凄く嬉しいです。あぁさんの赤葦凄く好きです。続きとても楽しみにしています。更新頑張ってください!! (2018年7月28日 18時) (レス) id: 4024dcb8cc (このIDを非表示/違反報告)
あぁ(プロフ) - しおさん» ありがとうございます(>_<)作品に合った雰囲気で書ければな、と思っていますのでそう言っていただけて嬉しいです、どうか最後までよろしくお願い致します (2018年7月18日 23時) (レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
しお - コメント失礼します。あぁさんのお話、どれも雰囲気溢れていてとても好きです。更新応援してます。そしてご自愛くださいね (2018年7月18日 21時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
あぁ(プロフ) - チャリアカーさん» ありがとうございます( ; _ ; )不定期更新となりますが最後までお付き合い頂けると嬉しいです、 (2018年7月17日 14時) (レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
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