彼女の寝言 ページ1
.
忘れ物を届けに来ただけだ。
昔からの親しい関係だからと部屋に上がらせてもらえるが、長居するつもりはない。
「どうやったらスマホを忘れるかな」
ベッドですやすやと眠る彼女に呆れながら、学校に忘れてあった彼女のスマホを机の上に置いた。
今も変わらない女の子らしい部屋を見渡して、もう一度彼女に目を移す。まだ少し幼さの残る可愛らしい寝顔に、思わず伸ばしかけた手。
「……んぅ、」
彼女の唸り声ではっと我に返り、その手を引っ込める。それが俺に、すぐに部屋を出ろという警鐘を鳴らしているのだと気づいた。
「……風邪ひいたらダメだよ」
そう言って、彼女に毛布を掛け直し部屋を出ようとすると、突然彼女の声が俺の耳を掠める。
「……ユーヤくん、と結婚する……」
その声は、はっきりと聞こえた。
振り返ると彼女はまだ夢の中。それが寝言であるのだと理解するのにそう時間はかからなかった。
どくんと心臓の音が静かな部屋に響く。
彼女の驚きの寝言に、しばらく放心状態でいた自分が冷静であるのか否かさえよくわからずにいた。
「……“ユーヤくん”って、誰？」
もちろん返事はない。
俺の知らない“ユーヤくん”
彼女とは長い付き合いなのに、彼女のことはよくわかっているようでわからないことだらけだということを改めて実感させられた。
『 A、おおきくなったらけいじとけっこんする！ 』
ふと思い出した、いつか幼い頃の彼女の言葉と重なって、込み上げてきた何かを堪えるように下唇を噛み締め、部屋を出た。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 157人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あぁ(プロフ) - みないさん» ありがとうございます( ; _ ; )恐縮すぎて言葉が出ません(>_<)赤葦くんらしさを出しながら最後まで話を組み立てられたらな、と思っています。最後までお付き合いいただけると光栄です (2018年7月28日 21時) (
レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
みない(プロフ) - 久しぶりに占ツクを開いたら大好きなあぁさんの作品が出てて凄く嬉しいです。あぁさんの赤葦凄く好きです。続きとても楽しみにしています。更新頑張ってください!! (2018年7月28日 18時) (レス) id: 4024dcb8cc (このIDを非表示/違反報告)
あぁ(プロフ) - しおさん» ありがとうございます（>_<）作品に合った雰囲気で書ければな、と思っていますのでそう言っていただけて嬉しいです、どうか最後までよろしくお願い致します (2018年7月18日 23時) (レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
しお - コメント失礼します。あぁさんのお話、どれも雰囲気溢れていてとても好きです。更新応援してます。そしてご自愛くださいね (2018年7月18日 21時) (レス) id: 12b75cb48a (このIDを非表示/違反報告)
あぁ(プロフ) - チャリアカーさん» ありがとうございます( ; _ ; )不定期更新となりますが最後までお付き合い頂けると嬉しいです、 (2018年7月17日 14時) (レス) id: 3b7b992785 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
