【HQ!!】僕と彼女と心算と。 (ページ28)

今日:7 hit、昨日:4 hit、合計:13,219 hit

２７心算ページ28

「いやぁ、まさか、ここまで心の傷を抉られるとは思わなかった」

それがスガさんの最初の一言だった。僕も木下さんも成田さんも困惑した表情で見つめていた。

「さっき、保健室に美緒を送り届けたんだけど……ちょっと脅しをかけられてね」

「脅し？」

「”いいですか、言う通りにして長尾Aを追い出してください。さもないと貴方の足を折ります。”」

足を、折る？
それはつまり、スガさんにとっては最後の舞台へ後一歩という所で突き放されるに等しい。
まず、あの女にそんなこと、出来るわけないと思うけれど。

「”もし、彼女を追い出せたら、影山くんの足を折ります。そしたら、【正セッター】の座は菅原さんの物ですよ。”ってさ。」

地面が揺れた。違う。地面じゃない。自分の心拍だ。自分の心拍で、世界が揺れる。何を言ってるんだ。何を言ってるんだ。何を言ってるんだ、あの女は。

僕達のバレーをなんだと思ってる。
先輩達の決意をなんだと思ってる。

スガさんがどんな気持ちで王様に正セッターを譲ったと思ってる。それでも天才に劣らぬように努力を続けているスガさんをなんだと思ってるんだあの女は。

ふつふつと、怒りが沸きあがる。その気持ちは先輩方も同じようで、眉間に多くのシワを寄せてスガさんの次の言葉を待っていた。

「でも、俺はそんなことしない。したくない。するわけが無い。」

太い眉を歪めて、彼は笑う。

「自分の足が折られてでも、俺はバレー部を守りたい。俺らの真剣勝負を、ただ1人のエゴのために台無しにしたくない。」

「当たり前ですよ、スガさん」

成田さんの言葉に、僕もコクリと頷く。

「だから、成田、木下。2人は美緒の監視を頼む。余計なことをしないように。俺は、アイツの言う通りにはしない。

月島、お前は、あれを知ってて長尾さんを読んだんだろ？気づけなくて悪かった。俺の、俺らの観察不足だべ。」

味方が増えていく。6つの瞳が僕を写す。これで、このまま進めば、これで、しっかりとまた、バレーができる。

『……気づいてくれて、ありがとうございます…先輩。』

美緒の思い通りになんてさせない。僕らは、バレーがしたくてここにいる。お前の騎士になるためじゃない。