23心算 ページ24
「あ、ああ、悪いな。」
「あ、いえいえ!別に急かしてないんです!
気になさらずごゆっくりどうぞ!」
なんとも場違いな明るい声に縁下さんは戸惑ったみたいだけどありがとう、と笑った。
聞こえてないと思ってるらしい、さっきの話が。
……それなら彼女がここに来るわけないのに。
「で、私が仕事してないとかそういう話でしたっけ!」
「なっ……お前聞こえてたのかよ……」
「地獄耳なめんな、です!」
「……悪い、その…」
「いや、あたしスポドリは作ってませんよ!」
「は?」
うん。その反応が妥当だよね。
僕も思った。
こんな堂々と仕事してません宣言をする人はいない。何か考えがあるということ?
影のある長尾さんの目からは何も読み取れない。掴みどころのない、黒尾さんみたいな人だ、本当に。
「おま、仕事してないって…」
「はい!だって、私正式に入ってないですもん!
ましてや、これから美緒ちゃんも立夏先輩も帰ってくるんですよね!帰ってきにくいですよ、私がバリバリ仕事してたら!
あ、でもタオル洗ったりスポドリ洗ったりくらいはしますよ!作るのは、多分合わないと思うので作ってないんです!」
そう告げた長尾さんはダメですか?と首を傾げた。
…勿論、縁下さんは本当の笑顔で首を振る。
「今年に入ってからマネの雰囲気すごい悪いからさ、気になってたけど…ありがとな。
ま、これで美緒がドリンク作ったって言うのは嘘だって分かったけどな。」
その言葉に一瞬、ほんの一瞬だけ長尾さんの目が光った。
「月島、山口、長尾さんを連れてきてくれてありがとうな。」
『……いえ。』
「ま、私が勝手に乱入してきたもんですけどね!」
「いやいや、有難いから構わないだろ。
……じゃ、ちょっと成田たちと相談してくるわ。
西谷たちはもう少し落ち着かねぇと信じないだろうし。」
……これで、2年生3人はこっちのもんだね。
そう目で物語っている怖いくらいのいい笑顔で長尾さんは僕と山口からスポドリを受け取った。
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ピノ(プロフ) - 新作おめでとうございます(^_^)!!!!! つっきー!楽しみ! (2017年1月26日 20時) (レス) id: fd697664d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:木戸 凛々 | 作成日時:2017年1月25日 18時