第十九話 ページ20
『何や平気そうやな。…ま、後で救急箱持ってきたる。使い方は…あー、分かるよな…？』
「？…？」
『ハハ、わかっとらんやろお前。』
相手が首を傾げたので、こっちも傾げつつ指で丸を描いたらなぜかワシワシと頭を撫でられた。
…気のせいかしら。凄く小さい子扱いされてる気がする。いや、でもまあ、大人ってこんなもんだしな…いつまでも僕らのこと小さい子扱いするもんね…
諦めの気持ちはありつつ、「不満です」という意思表示で風船みたいに頬を膨らませていたら、今度は声を上げて笑われた。
こりゃだめだ、と肩を落とすと、今度はぽむぼむと頭を軽く叩かれる。励まされている…のか？
子供扱いは変わらないけれど(まあ実際子供だけど)、慣れてるから不愉快な気分にはならない。ただ、良い人なんだな、と感じた。
「あ、そうだ、とんとんさん。」
『…今もしかして、俺のこと呼んだか？どうした？』
「さっきは、助けてくれて、ありがとう。」
なるべくゆっくり言いながら、ペコリと頭を下げる。
言葉はともかく感謝の気持ちは伝わったようで、肩を軽く叩かれた。気にするな、という風に。
『若いのに礼儀正しいなあ。…じゃ、俺は仕事に戻るから。メイドさんが持ってきたベルあるよな？何かあったらあれ鳴らすんやで。こっから出たらあかんよ。』
軽く手を上げてから、とんとんさんも廊下へと姿を消す。
…よかった、とんとんさんまでダクトで帰られたらどう反応しようかと思った。
僕はちょっとズレたことに安心しながら、ダクトの下に放置されたままの丸椅子を動かす。
それからドレッサーの上に置きっぱなしだった黒い手帳を手に取り、なんとなくぱらぱらと捲った。
…さっき、最初に通された部屋で見た本の文字。あれも僕は読めなかった。1つだって。僕が書いたこの文字も、多分誰にも読めないと思う。
手帳を閉じて、黒革の表紙をきゅっと指の腹で押して握る。
祈りを込めてそうしていると、ふとあることを思いついた。
思い付いたって言うか、いつか呼んだ小説の一場面を思い出したのだ。
僕は急いで手帳を開き、丸椅子に座って、インクを溢しそうになりながら瓶の蓋を回した。
いつか読んだ、異世界へ召喚されてしまった子供の話。
その子供は、彼女より前に異世界へ呼び出された人物の手記を王様から手渡される。
その本を読み、彼女は自分の置かれた状況を知るのだ。
…そしてきっと、僕の今の状況は、彼女と似ている。
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ニノ(プロフ) - みずきさん» コメント有難う御座います。実は第七話にてエイリアンネタを入れるつもりでしたが、没となりました。勿体無くて消せておりません。面白いと言って頂けて嬉しいです、そして応援ありがとう御座います！多忙の身故、細々とですが続けさせて頂きたく思います。 (2022年10月8日 23時) (
レス) id: 36c64675ec (このIDを非表示/違反報告)
みずき - わぁ、夢主くんがエイリアン？なの初めて見ました！めちゃくちゃおもろいです！応援しとります！頑張ってください！ (2022年10月7日 20時) (レス) @page35 id: 129e1b5429 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ニノ | 作成日時：2022年9月14日 1時
