拝啓、親愛なるあなたへ【ディルック】 (ページ4)

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二通目ページ4

裕福ならば人生の幸福を約束してくれるのか

生まれながら高貴な身分を持ってさえいればなんでも手に入るのか

否、そんなことはない

街灯や家々から漏れる光で明るいはずであろう城下町を自分の目から隠すように雪がふる

格子が着いた窓

内側からは開けられない部屋の扉

自分の住処であるはずの家内を移動することも自由にできない

彼女、Aの唯一の楽しみであった夜空の星を見ることさえ、今日はできなかった

「......はぁ」

ため息を吐いたところでどうにもならないのはわかっていたが、この憂鬱な気持ちをどうすればいいのだろう

読み進めていた城下町のある宿屋の店主からの手紙から目を離し、窓の外をぼうっと見る

コンコンと音がした後、扉の外から聞こえる鍵の回る音

「お嬢様、就寝のお時間です」

燭台を手に持ったメイドが僅かに開いた扉の向こうから告げる

廊下は暗かった

「.....うん、わかったわ」

ゆらりと燭台の蝋燭と呼応したかのように彼女は瞳の奥をゆらめかせ、寝台へと向かう

「....おやすみなさい」

音もなく扉がしまり、部屋には再び静寂が訪れた

「おやすみ」といった

返事はなかった