一通目 ページ3
憤怒、憎悪、失望、決意
それら全ての感情を抱いて青年、ディルックは母国であるモンドを経った
それが約2年前の話である
そこに至るまでにはあまりにも複雑で、一言ではとても言い表すことの出来ない事情があるのだが、今はその説明をするときではないだろう
とにかく彼がそのような世にはびこる目を背けたくなるような感情を持ち、2年も旅をしているのには理由があるのだ
「ヴァネッサ」
落ち着いた、だがどこか強さを感じる低音が静かに名を呼んだ
名を呼ばれた存在はバサッと羽音を響かせながら、一通の手紙を彼の頭上に落とす
落とされた黒い巻物をパシッと片手でとり、ディルックは静かに手紙に目を通した
「.......」
"North"
手紙に書かれたのは一言だけ
だがこの一言に、ディルックの行き先が書かれてあった
中身を確認した彼はまるでもう用はないとでも言うように手紙を燃やす
グローブに包まれたしなやかな手からは想像できないような轟轟とした炎を出し手の中のものを灰にした
「北」
そう手紙には書いてあった
彼の目的地はずっと北である
極寒の極地、スネージナヤ
そう、彼はある"モノ"の真相を突き止めるために国を経ったのだ
それは紛れもない、彼の実父の命を奪った憎むべきモノであり、彼の義弟と仲違いをする原因となったモノであった
神に愛され、神になる資格を与えられたディルックは、授かった才能の証、自らの神の目を母国へ捨ておき、自らはまやかしである"邪眼"について探し求めている
「行こう」
静かに響いた低音
ザクっと砂利をふみ、荒野へ再び歩みを進めたディルックに従事するように一匹の鷹が羽を広げた
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作者名:らっか | 作成日時:2022年7月3日 18時