なまいき注意報。【宮侑】

５話 ページ6

侑「こっち着ぃ」


『え？』


侑「北さんのやなくて俺の着てや」


『な、なんでよ』


侑「何でもや！！」









バサッ









自分のジャージを私の肩にかける









『せっかく北が貸してくれたのに…』


侑「〜北さんはなぁ、体調管理のために毎日徹底してんねん
せやからそのジャージがないと腹壊してまうやろ！！」


『そ、そうか…』









確かにそうだ。明日朝練で返さなきゃ









『気付かなかった。ありがとう。宮』









侑のに袖を通すと丈が長すぎて手がなかなか出てこない


下もスカートがほぼ隠れている


体の違いっていうか、なんていうか


侑も男なんだなって、思ったりした









侑「…」









　






ｽｯ









『み、や？』









　









目の前で急に屈み顔を近づけてきた侑



鼻がもう少しでくっつきそうな距離



なぜか拒むことができない



それはじっと見つめてくる真っ直ぐな瞳



それが考えることをやめさせる



２人の間に流れる沈黙









　








　









　









侑「侑って呼べや」









　







　









　









ﾄﾞｷｯ＿＿＿＿＿＿＿＿＿









　









　









　






グイっ



『ぎゃっ！』









ジャージのチャックを上まで一気に上げてくる侑









侑「はよ帰るぞ」


『ちょ、待ってよ…！』









　









え、まって、何、今の…









『あ、侑…』


侑「何や！」


『何で名前がいいの？』


侑「そ、れは…」









顔が真っ赤になってあたふたしている


もじもじしているのを見ると少し可愛く思ってしまう


こんな見た目と図体でも









侑「名字で呼ばれんのあんま嫌やねん。違和感あるし
宮っつったら治もおんねん。せやから侑でええやんか…！」


『まあ、それもそうね』









電車が来て、空いている席に２人で座る









侑「ゲッ、こんな時にまで勉強するん」


『今年受験生だしね』









単語帳をぺらぺらとめくる


隣の侑はイヤホンをしてスマホをいじり始めた









　









『ふぁ〜』









さすがに今日は自主練やりすぎたかな


でもこのくらいやらなきゃ


“勝利のファンファーレ”を吹くことはできない


チャンスはあと1年もないんだ


それに北もレギュラー入り目指して頑張ってるんだ


私ももっと頑張らないと









『もっと…』

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