第210話 ページ7
九条家失踪事件とは、今から約10年ほど前に起きた事件のこと。
九条家は、幕府お抱えの医者一族で、かなり裕福な家であった。
そんな一族が、攘夷戦争から逃げるため、激戦区ではない、田舎の村の別邸にて身を寄せていた。
その別邸に、たった一人の攘夷志士が攻め込んだ。
荒れに荒れたその屋敷には、怪我をした人がいることも、はたまた遺体が転がっていることもなかった。
ただ、そこにあったのは人がいた形跡だけ。
外に逃げたという目撃情報もなかった。
土「犯人が攻め込んだ理由、被害者がいなくなった真相、何故人だけぽつんと消えたのか。
謎は山積みの事件だ。」
沖「で……犯人の名前ぐらいは、分かってるんですかィ？」
という沖田くんの質問に私は目を伏せ、近藤さんは腕を組み、土方さんは煙草の煙を吐いた。
土「……分かってんのは攘夷志士時代の異名。�犧�雪�瓠�
「……」
私は何も言わず、視線を横にそらした。
沖「…Aさん？」
「……え？どうしたの？」
じーっと沖田くんに眺められ、私は首を傾げると沖田くんはなんでもねぇですと呟くように言った。
土「A、九条家に行ってこい。」
「え？九条家に？」
近「実は、とっつぁんから九条家の場所を教えてもらったんだ。」
近藤さんが付け足すそうにそう言い、土方さんは地図を置いて指を指した。
土「本邸は江戸城のある方。別邸は……ここだ。」
近「とっつぁんから、九条家に行くならAちゃんがいいだろうということだったんだ。」
松平のとっつぁんは何考えてるのかな……
土「あまりぞろぞろ行くわけにもいかねぇからな。」
「……わかりました。」
私は九条家の地図を貰って、部屋を出て息を整えた。
「…行くしか、ないか。」
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作者名：Rukapyon | 作成日時：2023年11月10日 18時
