2:プロポーズにはまだ早い ページ38
「月、綺麗ですね」
そう言ってしまってからその言葉が持つ意味を思い出してAは顔を赤らめる。
「あ、あの!違います!そういう意味じゃないくてですね?!」
Aの言葉に一瞬固まった土方だったが否定の言葉を聞いてワンテンポ遅れて頷く。
「…すみません」
「大丈夫だ。この場を用意したのお前だろ?疲れてるんじゃねぇか」
「そう、かもしれませんね」
疲れていなければこんなこと口走らなかった、はずだ。
「あぁ…大事なことを言い忘れてました」
「なんだ?」
「お誕生日おめでとうございます」
土方の目を真っ直ぐ見つめてAが言えば瞳孔が開きっぱなしの目を僅かに瞬かせて珍しく優しい笑みを土方は浮かべた。
「ありがとな」
「あの、色気も何も無いプレゼントで申し訳ないのですが」
Aはずっと後ろ手に持っていた袋を土方の方に差し出す。
「刀の手入れセットです。お部屋の掃除をしている時に結構ボロボロになっていたので…」
「丁度買い替えようと思ってた。悪いな」
Aは一週間前からずっと何をプレゼントしようか悩みに悩み果てには銀時にまで相談した。
その結果がこれだ。
ちなみに銀時からのアドバイスと言えば"特大マヨネーズでいいだろ"であった。もちろん沈めたが。
「何も思いつかなくて実用的なものがいいかと思いまして…」
少し恥ずかしそうに言うAに土方は口元を緩めて微かに声を出して笑った。
「あの!それだけじゃ忍びないので何かリクエスト下さい。出来る範囲でお答えします」
「…そうだな」
パッと今思いついた提案をそのまま口にすれば僅かに迷う素振りを見せる土方。
「これから先、一生。真選組と共にいろ」
土方からのリクエストにAは大きく目を見開く。
「…いや悪い。今のは無しだ。待ってくれ」
「無しじゃ。無しじゃなくていいです!ずっと女中します!皆さんのこと土方さんのこと一生支えま…」
そこまで言ってから待ってこれプロポーズじゃない?とAは再び顔を真っ赤に染める。
「やっぱり忘れましょう」
「そうだな」
2人はそれぞれに酔いは、疲れは、怖いものだと思った。
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光華 - とても面白いです更新頑張ってください応援してます (2019年8月1日 23時) (レス) id: e145b750ea (このIDを非表示/違反報告)
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