5:許嫁だからこそ出来ないことがある ページ6
｢こら、銀時！食べた皿は片付けてください｣
｢別にそんぐらいいいじゃねぇか｣
｢そんぐらいならやりな、さい！｣
そう言うとAは懐にある短刀を鞘に納めたまま銀時に向かって投げる。
｢うわっ！誰だよこんな危ねぇもんAに渡したやつ｣
｢私ですよ｣
襖の方から4人の様子を見ていたが銀時がそう聞いてきたので居間の方に向かって答えながら中に入る。
小枝などを切るのに使える刀が欲しいと言うので先日あげたばかりだ。
｢護身用ににもなりますしね。Aは君達と違って女の子ですから｣
｢こんなやつのどこが女だ！｣
｢何を？！｣
いつの間に仲良くなったのか1週間もすると銀時とAはこの調子だ。
最近は口調もくだけてきて他の門下生達とも随分と打ち解けた。ただ1人除いて。
｢晋助。何をいじけているんですか？｣
｢いじけてなんかねぇよ｣
そう言ってそっぽを向く横顔は明らかにいじけている。もしくは、
｢高杉はいじけてるのではなくて妬いてるのですよ｣
そう。妬いている。
他の門下生に対しても愛称で呼んだりとするようになったがなぜかAは晋助だけには硬い口調のままだった。
｢妬いてねぇよ｣
そう言うとまだ言い合っている銀時とAを横目に居間を出て行こうとする。
｢晋助様？どこに行かれるんですか｣
｢厠｣
それに気づいたAは卓の上を一瞥してから晋助の方に話しかける。
きちんと食器は下げたらしい。
｢A。何故、高杉にはそのような態度をとるのだ｣
そんな晋助の様子を気の毒にでも思ったのか小太郎がAにそう語りかける。
｢私は晋助様の許嫁。ということは将来妻となる予定ということ妻は1歩引いて夫を支えるものです。私はそうやって育ってきた｣
だから、今更出来ないとでも言うのだろうか。
｢俺もあのバカのことは気にしないで普通にしろって言ってんのにそれだけは聞かないんだよな｣
｢当たり前でしょう！貴方のように晋助様に接するなど出来ません｣
そのやり取りを見てため息をつく小太郎の頭をそっと撫でる。
小太郎も苦労が絶えませんね。
｢晋助はそれを望んでいるのでしょうか？｣
語りかける私にAはゆっくりと振り返る。
｢それは…｣
｢夫を支えるのが妻の支えならば彼の気持ちに寄り添うのも妻の、許嫁のつとめでは？｣
6:この2人可愛すぎてハゲた(作者が)→←4:調子狂うんだよ
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