4:紅い華の始まり ページ17
「Aちゃん」
着物に襷をかけ、鬼兵隊の羽織に身を包んだAの手を紗夜が握る。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
無事で、帰ってきて。そんな言葉を今更口にはしない。前線に立ちこそしなかったがこちらの来てから1週間ほど。大怪我をして運び込まれる仲間を沢山見てきた。
そんな甘い祈りを言えるほどここは甘い状況に置かれてはいない。
「紗夜!」
心の中でどうか大きい怪我をしませんように、紗夜が心の中で祈っていると歩いていったAが振り返る。
「今日帰ってきたら肉じゃが、食べたいな」
おどけたように微笑んで言うAに笑顔を返す。
「美味しいの作って待ってる」
今度こそ背を向けて歩き出した一行を見つめる。
「全く。敵わないなぁ…」
紗夜の不安をくみ取ったのか。絶対元気で帰ってくるよ、そういう意味で言ったのだろう。
「晋助。指示を」
微笑みを消すと隣を歩く高杉のことをAは見つめる。
「もちろん1つだ。敵を斬りまくって手柄上げてこい」
今日は初めて前線に出るわけだ。
「殿がヅラで先陣は晋助。私と銀時は」
「奇襲攻撃…ね」
女が戦場にいるのは天人からしても異質だろう。奇襲攻撃にはもってこいという訳だ。
「一部連れてってもいいがどうする?」
晋助の問いに少し先を行く銀時の背中を見つめると
「2人で十分」
不敵な笑みを浮かべるとそう答えた。
「上等だ。行ってこい」
高杉に背中を押されてAは銀時の隣に立つ。
この2人、後に敵だけでなく味方にまで恐れられるようになる白夜叉と戦場の紅い華である
「ノルマ1人につき20人な」
「え、多くない?」
「じゃあ俺30人でAちゃんは可哀想だから10人でもいいよ。女の子だもんなぁ」
「よし敵の前にお前を斬ってやる」
「え、嘘嘘じょーだん!ゴメンって」
70人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ