11:最高のぷれぜんと ページ12
「やっぱり馬子にも衣」
「くたばれ」
松陽に貰った着物を着て、みんなから貰った髪飾りで珍しく髪をアップにしたAを見て銀時が余計なことを言うのでデジャブになる。
「晋助、どうですか?」
勢いよく刀の柄で殴られたせいでバタりと倒れた銀時を他所にAは嬉々として高杉の方に行く。
「いいんじゃねぇの」
「本当ですか?」
「…似合ってる」
晋助がそう言うとパァッと効果音がつくような笑顔を浮かべる。
「そういう顔もすんのかよ」
ボソッと呟いた銀時に松陽が笑いかける。
「素直じゃない銀時には一生見せてくれない顔でしょうね」
「うるせーよ。てか素直じゃないのは俺だけじゃねぇし」
銀時の記憶にはフワリと笑うAの顔と目を吊り上げたAの顔しかない。
あんな年相応な幸せそうな顔。
「A、俺達からもぷれぜんとはあるぞ」
幸せオーラを晋助のそばで醸し出すAと仏頂面な銀時を見て桂はそう切り出す。これ以上この状況を放置したらタイミングを逃す。
「3人からも?」
今日1番の驚き顔で問うAに髪の毛を揺らして桂は深く頷く。
「銀時」
いつまでそんな顔をしているつもりだ、と無言で諭す。
「わーったよ」
隅に座っていた銀時と高杉は立ち上がると桂の隣に並ぶ。
「「「誕生日おめでとう、A」」」
差し出された紙袋の中には沢山の赤い紅葉の葉。そしてそれに埋もれるようにして綺麗な模様をした缶がある。
「綺麗…」
Aは紙袋を受け取ると紅葉の中から缶を取り出す。
「これは?」
「"はんどくりーむ"と言うやつだ。以前におばあが使っていたのを思い出してな」
缶の蓋を開くとフワッと甘くて優しい匂いが広がる。
「いつも水仕事で手が痛々しかったからな。俺ら3人からだ」
「有難く大切に使えよな」
あの時猫に引っかかれ手が血で赤くなったことで水仕事で荒れ、あかぎれの多いAの手を思い出したのだ。そして"はんどくりーむ"というぷれぜんとに辿り着いた。
「3人とも。ありがとうございます!大切に使うね」
紙袋をギュッと抱きしめると今日1番の笑顔を見せる。まるでずっと閉じていた蕾を開いた花が花開くような。
"そんなのはアンタらが選べばなんでもいいに決まってるでしょ"
紗夜に言われた通りであった。
幸せそうな4人の顔を松陽は笑顔で見守っていた。
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