＃�将将� ページ26
・
「 でも、それと同時に不安はより一層強くなった。
今回はたまたま大丈夫だっただけで、もし僕がまだ理性を取り戻せていない時に３人が来てしまったら？朝になってもこの姿に戻れていなかったら？考え始めたらキリがないよ。
… この体はね、理性は失っても記憶は嫌という程残るんだ。もしいつか彼等を、君をこの手で殺めてしまったらと思うと … 怖くて、怖くて仕方ない 」
そう小さく呟いた彼の顔は少しでも瞬きをすれば今にも泣き出してしまいそうで、それでも涙は流すまいと俯きシーツを握りしめるリーマスの姿はまるで小さな子供のようだった。
声を上げ泣くことすら自分に許さず、ただひたすらに全てを抱え込み耐えようとする優しい彼を抱きしめその背中をさする。その内声を殺し静かに泣き始めた彼の涙が伝う頬に、そっと手を当て水の膜でガラスのように透き通った緑色の瞳を見つめた。
『 大丈夫、貴方が不安に思うようなことはきっと起こらないわ。
だって貴方は、そうやって第一に友人の身を案じられるくらい心の優しい人なんですもの。
私も、ジェームズも、シリウスも、ピーターも … みんな貴方の味方よ、例えリーマス・ルーピンという人間が何者であったとしてもそれは変わらないわ 』
「 A … 」
だからもう１人で苦しまないで、とローブから取り出したハンカチでリーマスの涙を拭う。空気を察したマダムによって扉が締め切られた医務室は静かで、廊下の賑やかな声も少ししか耳に入らない。
それ故か彼が少し掠れた声で発したありがとうという言葉がやけに響いて鼓膜から離れなかった。
『 … ねえ、リーマス。貴方に魔法をかけてあげる 』
「 これは … チョコレートバー？ 」
『 本当はパーティーの時に渡そうと思っていたのだけれど … きっと、元気が出るわ 』
そう言って手渡したチョコレートを彼がおもむろに受け取り、それを丁寧に包む銀紙を破った後溝に沿ってパキッと折り取られた一欠片を口に運ぶ。
１口、２口 … 綺麗な二等辺三角形が徐々に形を失っていくのに比例するように、リーマスの顔も和らぎ綻んでいった。
「 … うん、確かにこれはどんな魔法よりも効果がありそうだ 」
『 ふふ、でしょう？ 』
「 まるで安らぎの水薬を飲んだみたいだ、今までの不安が嘘みたいに心が凪いでいるよ。
やっぱり、君は素晴らしい魔法使いだね 」
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 98人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
箱 - すてきな作品を書いてくれてありがとうございます (2023年3月31日 20時) (
レス) @page27 id: e97eef8072 (このIDを非表示/違反報告)
イジー - そうだったんですね！何も知らずに言ってしまっていました、すみません！これからも頑張って下さい！ (2023年3月20日 14時) (レス) id: c288b38476 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃかま 。(プロフ) - イジーさん» 実はジェームズがシーカーであるかチェイサーであるかは作者様のインタビューと映画で異なっているんです…なのでこの小説はインタビューに沿ってチェイサーという設定にしています！ (2023年3月10日 1時) (レス) id: c589118b68 (このIDを非表示/違反報告)
イジー - とても面白かったです！ですが、ジェームスってシーカーではありませんか？間違っていたらすみません。これからも頑張ってください！ (2023年2月18日 18時) (レス) @page14 id: c288b38476 (このIDを非表示/違反報告)
ぱあたん(プロフ) - とっても面白くて思わずニヤけちゃいました…！これからも頑張ってください〜！ (2020年5月9日 12時) (レス) id: 5f3f43ce15 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ちぃかま 。 | 作成日時：2019年12月17日 22時
