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「うわ…この人今までよく銃刀法違反で引っ掛からんかったな」
思わずボソッと呟く。黒髪の麗人はそんな事は気にせずに刀を慣れた手つきで鞘から抜いた。
「六幻…厄災招来……界蟲・一幻!!!!」
そう叫ぶと、その化け物を刀で一太刀にする。化け物は断末魔をあげながら灰と化した。
………
……
「あいつ…死んじゃったの……?」
力が抜けたようにへたり込む私に、黒髪美人(勝手に命名)は、ああ…と答えると持っていた刀をスルリと鞘に納めた。
急に涙がこぼれてくる。
何でだろう。私……私さっきまであいつに襲われかかってて……それで死にそうになってたのに……。
「殺す必要はなかったんじゃないの……?」考えるよりも早く言葉がこぼれていた。
思ったより震えなかったが、声色にはまるで糾弾めいた色が含まれていて、自分でもびっくりした。
自分が助けてって言ったのに……身勝手だけど、でも私はこれを望んでいたわけではない。
今の状況は最初から最後までフルスロットルでカオスだけど、自分の考えはハッキリしてる。
私は、ただこの生き物から逃げる事しか考えてなくて……その結果、こいつがどうなるかなんて先までは無責任にも考えていなかった。
本当は武器を抜いた段階である程度、察しがついていたはずなのに………。
涙目で黒髪美人を見上げるとその人は目を見張ってまるで信じられないというように私を見る。
その目にはどこかありえないと嘲笑の色が強く出ていた。
「お前……AKUMAに襲われてたんだぞ?」
「あっ…悪魔って……一応あいつは化け物みたいなグロテスクなルックスをしてるけど…たぶんワンちゃんだって!!」
そうだよね。何かの突然変異だよ…きっと!!あ、でもたまに芸能人でも親はルックス良くても掛け合わせるとブサくなる例もあるから……それの可能性も………。
「いや…どう見ても犬じゃねぇーだろ。今時、ゴールデン何とかでもあんなでかくないぞ!!」
「ゴールデンレトリーバーだろ。ちゃんと言えろよ。
つか…私も確かにあのときはどうにかしてって頼んだけど……何も殺す事はなかったと思う!!」
黒髪美人は早口で捲くし立てる私にため息をつくと、説明してくれた
あいつはAKUMAで、人の皮を被っている殺人兵器だと言うことを。
AKUMAは人の悲しみを原動力に製造される。千年伯爵というこの世界の終焉を望む者の手によって。
説明を聞き終わる前に涙はとうに乾いてしまった。
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作者名:クロ | 作者ホームページ:http://wanderalice.dojin.com/
作成日時:2016年10月13日 13時