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お腹がいっぱいで眠くなった私は、ごろんと布団の上に寝転がった。
そのまま扉間を見上げる。

「ん〜、お鍋美味しかったなぁ」
「それはよかった」

扉間が、優しく少しだけ微笑んだ。
そんな顔、するんだ。

「ねぇ扉間」
「なんだ」
「扉間は、お嫁さんとかいるの?」

私の言葉に、一瞬彼は沈黙した。
足をばたつかせながら適当に振った話題だ。
特に何も考えていなかったのだが。
ふと扉間の顔を見ると、慌てたような答えが返ってきた。

「いや、いない」
「そうなんだ。付き合ってる人とかは?」

私の質問に、扉間はぎこちなく目を泳がせた。
…いるのだろうか。

「いないが…なぜそんなことを聞く?」
「えっと、」

恋をしたことがないから。
でも、いつか恋をしてみたいから。
なんとなく、扉間なら恋の1つや2つ、経験してそうで、気になって。
そんなことを、答えるつもりだった。

しかし、私の言葉はそこで途切れることになる。
グラグラと地面が大きく揺れ始めたからだ。

「わ、何…?!」

かつて地震のない土地で生きていた私にとっては、初めての体験だった。
常に固くてしっかり私たちを支えてくれている地面が、揺らぐ。
こんなに怖いことはなかった。

「地震か」
「扉間、なんでそんなに平気なの?!」

涙目で扉間に縋り付くと、彼は驚きながらも私の背をぽんぽんと撫でた。
ごつごつした大きくて逞しい身体に包み込まれて、暖かい。
安心する。

「この辺りではよくあることだぞ。それにここはワシの土遁で作った研究施設だ。まず壊れることはない」

そう言って、彼は印を結ぶ。
冷静に状況を分析し対処する彼。
天井を見上げる横顔がかっこよく見えて、私の視線は暫く彼に釘付けになった。
こうやって近くでまじまじと見ると、この男の顔は端正な方だと思う。
なんというか…無駄のない顔だ。

「収まったか」

私の視線に気付いた扉間が、怒ったのか慌てて目を逸らした。
至近距離でじろじろ見つめて、私はなんて恥ずかしい女なのだろう。
慌てて、彼の身体から身を離した。

「ご、ごめん」
「いや、別にいい。…では、今日はもうそろそろ休むとしよう。Aも早く休め」

沈黙を恐れたのか、扉間がそう言い残して煙と共に消えてしまった。
全く、私は何をやっているのだろう、とため息。
もはや眠れる気は微塵もしなかったが、とりあえず布団にくるまったのだった。

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設定タグ:NARUTO , 千手扉間   
作品ジャンル:恋愛
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東雲(プロフ) - ifzwegvさん» 年単位の亀更新ですみません…コメントありがとうございます。無理のないペースで更新いたしますので、たまに覗いてみてくださいませ。 (4月10日 12時) (レス) id: 13c0e18287 (このIDを非表示/違反報告)
ifzwegv(プロフ) - 更新されてたー!! 当時から読んでいたのでとても嬉しいです。続きを気長に待ってます!! (4月1日 19時) (レス) @page40 id: e064c3839e (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ - 続き気になります‼頑張ってください‼ (2022年12月18日 0時) (レス) @page29 id: 76ae9f90b3 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 資格試験が今週でひと段落する予定ですので、終わったらまた2日に1回くらいのペースで更新します(願望) (2022年10月8日 17時) (レス) id: 7383fa8b56 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 黒渦クレナさん» うわー!前作も読んでくださったんですね、ありがとうございます!今プロットを大幅に書き直しているところです。お楽しみに! (2019年5月26日 0時) (レス) id: 3a02b4e62c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲 x他2人 | 作成日時:2018年8月23日 20時

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