24 ページ25
「見合いを断っただと？」
唸るような声の主は、黒い目を不機嫌そうに柱間に向けながら、盃を傾けた。
「結婚していないお前が言うセリフか、マダラ」
柱間は困ったような顔をしながら頬杖をつく。
最近できた、火影御用達の高級居酒屋の一室。
柱間が珍しく賭け事で勝った時なんかに、ひっそりとここで祝杯があげられる。
「オレにも見合い話がきている。忙しくて相手にしている暇などなかったが、オレも最近は結婚について考える余裕ができた。うちはの頭領として、子をなさねばならんかもしれないとな」
「ほう、お前もそんなことを考えるようになったか。相手がいるのかはわからんが」
「バカにしてるだろ！！」
マダラは毛を逆立てて柱間の髪をひっぱる。
「痛い痛い、やめろマダラ！」
「人を小馬鹿にするところは相変わらずだなお前！！」
ぎゃいぎゃいとひとしきり騒いだ後、マダラはふと真剣な顔に戻った。
「たしかに、オレたちが死んだ後に跡取り騒ぎが起きれば、成仏なんてできたもんじゃねえ。自分よりも柱間に子をなしてほしいという気持ちもわかるが、…それでも、オレたちはもういい年だ」
「ふむ」
「お前も家庭をもっている。あいつはあいつで、大切な人を見つけたほうがいいんじゃねえかと思ってるんだ。オレも妻の一人でも娶れば、多少は弟のことを考える時間も減らせるかもしれねえと思ってる」
ふ、と柱間が優しく微笑んだ。
「お前はやっぱり優しい男だ、マダラ。弟を殺した扉間を、そんな風に心配してくれるとはな」
「心配なんてしてねえ！オレはただ、即答で見合いを断ったってのがよく理解できねえだけだ」
急いで酒を煽るマダラは、混乱しているようだ。
弟を偲ぶ気持ち、弟を殺した相手を恨む気持ち。
しかし同時に、弟を持つ兄として、柱間の弟を気に掛ける気持ち。
(それを認めたくないのだろうな、本当に優しい男ぞ…)
柱間はにっこり笑うと、少し言いにくそうに言葉を濁しながら、ぽつりとつぶやいた。
「大丈夫ぞ。扉間にも…よくは知らんが、大切な人がいるらしい」
「なんだそれ。じゃあ結婚すればいいじゃねえか」
「まあ、扉間たちにもいろいろあるんぞ。きっと」
「…そうか」
マダラは全く納得していない顔で盃を空にすると、窓から空を見上げた。
空には大きな月が、静かにたたずんでいる。
そのうちマダラもどうでもよくなり、場はほかの話へと移っていくのであった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 75人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
東雲(プロフ) - ifzwegvさん» 年単位の亀更新ですみません…コメントありがとうございます。無理のないペースで更新いたしますので、たまに覗いてみてくださいませ。 (4月10日 12時) (
レス) id: 13c0e18287 (このIDを非表示/違反報告)
ifzwegv(プロフ) - 更新されてたー!! 当時から読んでいたのでとても嬉しいです。続きを気長に待ってます!! (4月1日 19時) (レス) @page40 id: e064c3839e (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ - 続き気になります‼頑張ってください‼ (2022年12月18日 0時) (レス) @page29 id: 76ae9f90b3 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 資格試験が今週でひと段落する予定ですので、終わったらまた2日に1回くらいのペースで更新します(願望) (2022年10月8日 17時) (レス) id: 7383fa8b56 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 黒渦クレナさん» うわー！前作も読んでくださったんですね、ありがとうございます！今プロットを大幅に書き直しているところです。お楽しみに！ (2019年5月26日 0時) (レス) id: 3a02b4e62c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：東雲 x他2人 | 作成日時：2018年8月23日 20時
