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足先から、冷たい感覚が駆け巡った。
扉間もいつかは誰かと結婚して、子を産んで、一族の繁栄に貢献するのだろうと頭ではわかっていた。
わかっていた、つもりだった。

「それをどうして、私に」
「扉間に言う前に、Aに知ってもらうべきだと考えたのでな…」
「私が嫌だといっても、その話は止められないんじゃない?」
「むむ…その通りぞ。お相手は火の国の大名のご息女で、芸事にも優れ、文学にも造詣が深い。今回の見合いの話は、その大名が会合で扉間を見たときに気に入ったことがきっかけで持ち上がっておる。火の国との関係を深める意味でも、一族の繁栄に貢献する意味でも、この婚姻は重要なものぞ」

なるほど、理屈はわかる。
でも、感情はそう簡単に言うことを聞いてくれない。

「扉間にはいつ言うの」
「1週間以内には返答をと言われておるのでな、できれば明後日には言おうかと思う。というより、オレの隠し事など扉間にはお見通しだからの」
「そっか。話すだけ話してみてよ」

私は精一杯の強がりで、そういうほかなかった。
扉間の意思が関与する余地があるのかはわからないが、一番大切なのは本人の意思だ。
私がどれだけ嫌がって駄々をこねたとしても、私と扉間が法に則って結ばれることはないうえ、扉間の子を産むこともできない。
このお見合い話に反対をしたとして、私には何一つ代案を出すことができないのである。
悔しくて仕方ない。

私は、机に置いてあった茶菓子をひっつかむと、走って部屋を飛び出した。
扉間は私のだと、叫んで回りたい。
直接好きだと言われたことはなくとも、扉間がどれだけ私を愛し、大切にしてくれているかはわかっている。
私だってもちろん、負けてない。
自分の意に反して視界がゆがむ。
それがまた悔しくて、いっそうぼろぼろと涙が流れ落ちていった。
走る速度がどんどん上がる。
どん、と鈍い衝撃が体を後ろへ押し返した。

「どうした、A」

扉間だ。
よりによって、このタイミングである。

「何かあったのだろう。場所を変えるか?」

扉間の手が私の肩をそっと抱く。
そのまま一瞬にして、私の部屋まで飛ばされた。

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設定タグ:NARUTO , 千手扉間   
作品ジャンル:恋愛
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東雲(プロフ) - ifzwegvさん» 年単位の亀更新ですみません…コメントありがとうございます。無理のないペースで更新いたしますので、たまに覗いてみてくださいませ。 (4月10日 12時) (レス) id: 13c0e18287 (このIDを非表示/違反報告)
ifzwegv(プロフ) - 更新されてたー!! 当時から読んでいたのでとても嬉しいです。続きを気長に待ってます!! (4月1日 19時) (レス) @page40 id: e064c3839e (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ - 続き気になります‼頑張ってください‼ (2022年12月18日 0時) (レス) @page29 id: 76ae9f90b3 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 資格試験が今週でひと段落する予定ですので、終わったらまた2日に1回くらいのペースで更新します(願望) (2022年10月8日 17時) (レス) id: 7383fa8b56 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 黒渦クレナさん» うわー!前作も読んでくださったんですね、ありがとうございます!今プロットを大幅に書き直しているところです。お楽しみに! (2019年5月26日 0時) (レス) id: 3a02b4e62c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲 x他2人 | 作成日時:2018年8月23日 20時

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