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私は布団から起き上がると、昨日扉間にもらった花に目をやった。
真白くて大きな百合。
花に詳しくはない私でも、その美しさと香りのよさですっかり気に入った。
扉間が任務帰りに立ち寄った花屋で見つけてきてくれたようだ。
私は花より団子であるが、部屋に花が飾られているだけで心は安らぐ。

このところ、うちはとの戦は熾烈を極めているようだ。
扉間はたまに私の部屋に来て、何気ない話をして帰っていく。
戦の話は、お互いにしたくない。

扉間とは、あの日以来触れ合っていない。
私は扉間に触れたくて仕方ない。
でも、生きている人に故人が迷惑をかけるわけにはいかない気がして、なんとなく触れられない。
あと少しの距離が、こんなにも遠い。

考え事をしていると、お腹が空いてきた。
何か少しお菓子でも食べようかな。
そんなことを考えていた時だった。

「A、いるか」

愛しい人の声。

「ええ。どうぞ」

扉を開けると、戦から帰ってきたそのままの姿の扉間。
私の隣に座った彼の足の運びに、ふらふらとした違和感を覚えた。

「扉間、どうしたの」
「殺せなかった」

彼は表情を隠すように、私を抱き寄せた。

「うちはイズナを即死させられなかった」

イズナ。
たしか、うちはマダラの弟。

「致命傷は負わせたが、まだ分からない。マダラの視力は最近落ちてきていた。イズナの目を使って永遠の万華鏡写輪眼を手に入れるやもしれん」
「…」
「早くこの戦を終わらせなければ、また犠牲者が出る。早く、争いのない世界を作らなければ」

永遠の万華鏡写輪眼と言われてもピンと来なかったが、扉間が弱っていることだけははっきりと分かる。
いつも感情を完璧に制御している彼が、私の前で感情を吐露する。
名前のない関係。未来のない関係。
でも、私にはこれだけで十分。
だって私には、初めから未来がないのだから。

扉間の厚みのある背に手を回し、ゆっくりと撫でる。
強ばっていた彼の体の緊張が解け、肩に心地よい重みが乗る。

いつの間にか日は完全に落ち、コオロギの鳴く声が遠くから聞こえてくる。
私たちは言葉を交わさず、ただお互いの存在をそこに感じ合っていた。

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設定タグ:NARUTO , 千手扉間   
作品ジャンル:恋愛
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東雲(プロフ) - ifzwegvさん» 年単位の亀更新ですみません…コメントありがとうございます。無理のないペースで更新いたしますので、たまに覗いてみてくださいませ。 (4月10日 12時) (レス) id: 13c0e18287 (このIDを非表示/違反報告)
ifzwegv(プロフ) - 更新されてたー!! 当時から読んでいたのでとても嬉しいです。続きを気長に待ってます!! (4月1日 19時) (レス) @page40 id: e064c3839e (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ - 続き気になります‼頑張ってください‼ (2022年12月18日 0時) (レス) @page29 id: 76ae9f90b3 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 資格試験が今週でひと段落する予定ですので、終わったらまた2日に1回くらいのペースで更新します(願望) (2022年10月8日 17時) (レス) id: 7383fa8b56 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 黒渦クレナさん» うわー!前作も読んでくださったんですね、ありがとうございます!今プロットを大幅に書き直しているところです。お楽しみに! (2019年5月26日 0時) (レス) id: 3a02b4e62c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:東雲 x他2人 | 作成日時:2018年8月23日 20時

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