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「…と、この穢土転生の術は死者を蘇らせ、意のままに操ることができる。この術は今後の千手一族の戦法を大きく変える」
その集会は、夜に行われた。
戦に疲れているであろう千手の忍たちが、扉間の話に真剣に耳を傾けている。
「実は、術の完成前に穢土転生したAという者がいる」
私は緊張でカクカクとしながら、聴衆の前に姿を現した。
ザワザワと声がする。
「話を聞く限り、Aは恐らく我々よりもさらに先の時代の者だ。既に亡くなっている。Aは穢土転生された身であるが、術者のワシがどのように操作しても術が解けぬようだ。恐らくバグであろう」
「バグとはなんぞや」
「穢土転生として意思を縛ることは不可能のようだが、不死身という機能は健在だ。では、少し実演する」
「バグとはなんぞや」
話について来られない柱間を無視し、扉間は私に向かって刃を向けた。
「ではA、失礼する」
その言葉と共に、容赦なく刃が私の身体を貫く。
塵が宙を舞い、聴衆はおおっと声を上げた。
痛みは全くない。
私の身体を貫いた刃は扉間の持っている鞘に収められた。
塵がどんどん身体の中心に集まり、腹を修復する。
「と、このように一瞬にして回復する。こんな不死身の兵が味方につけば、我々は大いに有利となる」
あちこちから声が上がる。
感嘆する者、訝しむ者、反対する者。
しかしやがてその声は拍手となって集会所を包んだ。
やらなければ、やられる。
戦の世を生き抜くのに、手段は選んでいられない。
ーーー
「A」
集会の後で、扉間がこっそりと私を呼び出した。
晴れて公認の存在となった私は、縁側に座り、月明かりをぼーっと眺めていた。
「怖くはなかったか。痛くはなかったか」
皆の前で見せている厳格な扉間とは打って変わって、扉間は眉を寄せて私を心配する。
「大丈夫。これで千手の屋敷を好きに歩けるし、きっと戦の役にも立てるよ」
それを聞いた扉間が、私に手を伸ばした。
彼の逞しい腕が、私の身体を包み込む。
大きな手が、私を撫でる。
「ありがとう、A」
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東雲(プロフ) - ifzwegvさん» 年単位の亀更新ですみません…コメントありがとうございます。無理のないペースで更新いたしますので、たまに覗いてみてくださいませ。 (4月10日 12時) (レス) id: 13c0e18287 (このIDを非表示/違反報告)
ifzwegv(プロフ) - 更新されてたー!! 当時から読んでいたのでとても嬉しいです。続きを気長に待ってます!! (4月1日 19時) (レス) @page40 id: e064c3839e (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ - 続き気になります‼頑張ってください‼ (2022年12月18日 0時) (レス) @page29 id: 76ae9f90b3 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 資格試験が今週でひと段落する予定ですので、終わったらまた2日に1回くらいのペースで更新します(願望) (2022年10月8日 17時) (レス) id: 7383fa8b56 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 黒渦クレナさん» うわー!前作も読んでくださったんですね、ありがとうございます!今プロットを大幅に書き直しているところです。お楽しみに! (2019年5月26日 0時) (レス) id: 3a02b4e62c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲 x他2人 | 作成日時:2018年8月23日 20時