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ある晴れた朝。
うだるような暑さで、つい目が覚めてしまった。
まだ日の上らないうちに、近くの林へ散歩に出かけた。
ここは千手一族の私有地であり、千手兄弟にのみ立ち入りの許されている休憩場所。
私が唯一、外に出ることのできる空間である。
胸いっぱいに外の空気を吸い込み、遠くに鳥のさえずりをきく。
夏の早朝は、心地いい。
背後に、人の気配を感じた気がした。
振り返ると、そこには青い甲冑を来た、銀髪の男が。
「扉間…」
私にしっぽがついていたら、犬のようにぶんぶんと振っていたことだろう。
扉間も表情を緩めながら、私の頭を撫でる。
「ただいま帰った、A」
大きな手の温度と質量を感じ、胸の奥があったかくなる。
「おかえり、扉間」
「これから着替えて報告をせねばな」
「今日は休めるの」
「ああ」
その言葉に、ほっとする。
今日は扉間とゆっくり話せる。
ーーー
「ご苦労だったぞ、扉間」
扉間の報告を聞いた柱間は苦々しい顔でそう告げた。
「それにしても…ついに完成したか」
「ああ。これで味方の兵力を大幅に増やすことができる。爆弾を仕込んで敵の陣地に送り込み、陣地もろとも爆破させることも可能だ」
「…」
「か、画期的な術ぞ。死人を操るというのは少し気が咎めるが…」
穢土転生の術。
生者を生贄に死人をそっくり蘇らせ、操る術。
本来ならば、相手の意思をも縛り、術者の思い通りに解除もできる。
その術が、ついに完成したのだ。
戦の多いこの世界で、この術は今後大いに役に立つはずだ。
「そこで、Aの了承を得られるなら、皆の前で一度説明をしたい。今後の戦法に大きく関わってくる術だからな。しかし、もしかしたら実演をするやもしれん。Aの存在をこれ以上隠し続けるのにも労力がかかる。無理強いをするつもりは全くないが、一度考えてみてはくれないだろうか」
「つまり、みんなの前で爆破されたりするかもしれない、と」
「ああ」
扉間は気遣うようにこちらを見ている。
「わかった。扉間やみんなの役に立てるなら、やるよ」
そうして、私は千手一族の前でお披露目されることとなった。
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東雲(プロフ) - ifzwegvさん» 年単位の亀更新ですみません…コメントありがとうございます。無理のないペースで更新いたしますので、たまに覗いてみてくださいませ。 (4月10日 12時) (レス) id: 13c0e18287 (このIDを非表示/違反報告)
ifzwegv(プロフ) - 更新されてたー!! 当時から読んでいたのでとても嬉しいです。続きを気長に待ってます!! (4月1日 19時) (レス) @page40 id: e064c3839e (このIDを非表示/違反報告)
玉ねぎ - 続き気になります‼頑張ってください‼ (2022年12月18日 0時) (レス) @page29 id: 76ae9f90b3 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 資格試験が今週でひと段落する予定ですので、終わったらまた2日に1回くらいのペースで更新します(願望) (2022年10月8日 17時) (レス) id: 7383fa8b56 (このIDを非表示/違反報告)
東雲(プロフ) - 黒渦クレナさん» うわー!前作も読んでくださったんですね、ありがとうございます!今プロットを大幅に書き直しているところです。お楽しみに! (2019年5月26日 0時) (レス) id: 3a02b4e62c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:東雲 x他2人 | 作成日時:2018年8月23日 20時